映倫を直撃! 日本で公開される映画が性表現に保守的なのは「検閲」されているからなんですか?

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Eirin

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 成人年齢を20歳から18歳に、という民法改正案が来年の通常国会で提出されるらしい。また、今年は選挙権年齢を従来の20歳から18歳に引き下げるという、大きなニュースもあった。性風俗店を利用できるのも、そこで働けるのも18歳から。その一方で、喫煙、飲酒が認められるのは依然として20歳から。「大人」と「子ども」の境目は時と場合によって前後するが、映画の世界では18歳はもう大人。R18+指定の映画を観賞できる。

 話題の映画がR18+指定だと聞けば、多くの人は「過激な作品なのだろう」と思う。濃厚なセックスシーンがあるのか、残酷な暴力シーンがあるのか、もしくはドラッグを扱うシーンがあるのか。現在、日本で劇場公開される映画のほとんどは次の4種類に区分されている。

 G……誰でも観賞できる
 PG12……12歳以下の児童の観賞には、助言・指導が必要
 R15+……15歳以上が観賞できる
 R18+……18歳以上が観賞できる

 これを決定するのが「映倫」という機関であることは一般常識レベルだが、その実態はあまり知られていない。筆者は性表現を含む映画を好んで鑑賞するが、R18+だと期待していたのに肩透かしを食わされることもある。一体、どういう人たちがどういう基準で区分しているのか。その人たちは性表現に厳しい目を向け、ちょっとでもあからさまな描写があると、「ダメダメ、これじゃ上映を許可できないよ!」と表現の自由に圧力をかけてくる、とても保守的な“検閲的”機関ではないのか。

 そんな疑問を直接ぶつけるべく、東京・銀座にある映倫こと「映画倫理委員会」を訪ねた。迎えてくれた平山達郎さんは審査員のひとり。

平山達郎さん(以下、平山)「検閲的だなんて、とんでもない! 映倫は世界的に見てもめずらしい、民間の第三者機関。強制力はまったくないんです。それどころか特に性愛描写については、公権力と戦ってきた歴史があります。そして私たちの基準は絶対的なものではなく、時代の要請に合わせてフレキシブルに変わっていることを知ってほしい」

 日本映画の審査は、脚本の段階で行われる。が、それはあくまで自主提出。国内で制作される映画がすべて映倫の審査を受けなければならないという決まりはない。

平山「私たちはまず脚本を見て、こちらから『これはPG12指定ですね』『こうした描写があるなら、R18+指定になりますよ』といったことを伝えます。それが映画会社の意に添わないときは協議の場を持ち、『ここをこうした表現にすれば、R15+になりますよ』のような提案します。双方の合意が得られて初めて、区分が決まるんです。こちらから一方的に押しつけることはできないんですよ」

性表現に変革をもたらした2つの事件

 映倫の歴史は、前身である映画倫理規程管理委員会(旧映倫)がGHQの指導のもとに設立された1949年から始まる。戦時中は“国策”として戦意を高揚させる映画以外は認められなかった。映画の制作、内容に対して政府の意向が反映するのを避けることこそ、旧映倫の使命だった。

 審査対象となるのは、何も性愛描写だけではない。暴力、宗教、人権、差別……と多岐にわたるが、しかしその歴史のなかで最も問題視され、映倫自体の存在意義が問われたのは、どう見ても性愛描写関連だ。

 旧映倫による修正第一号は、谷崎潤一郎原作『痴人の愛』を映画化したもので、ヒロインが肉感的に誘惑するシーンが多すぎるがゆえだった。その後もストリップ映画、バスコン映画(バースコントロールの重要性を説く性教育映画……のふりをしたエロ映画!)、かの石原慎太郎原作『太陽の季節』を筆頭とする太陽族映画などなど、手を替え品を替え性愛描写のある映画が登場するため、一般映画とは別に“成人映画”という区分が設けられた。

平山「その成人映画の上映をめぐって各地での上映反対運動や、警察の介入が頻発し、旧映倫への批判がピークに達しました。それを受け“新生・映倫”、つまり現在まで続く映倫が設立されたわけですが、じきにピンク映画や日活ロマンポルノが大ブームとなります。それにともない、大手が製作する映画にもキワドイ描写が見られるようになりました」

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