「なんでわかってくれないの?」を言わなくなる。自分の感情の主導権を握るには/アンガーマネジメントとは?【前編】

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自分の心の中の気持ちだけは、自分で手綱を握れる

――自分自身を振り返ると、誰かに対して怒りをぶつけている時って、「なんでわかってくれないの?」という感情でいっぱいになっていることに気がつきます。

柊 そう、「わかってほしいのに、わかってもらえない」ことで怒りが沸騰してしまうことはありますよね。その時、「わかってもらえない自分」を、被害者だと感じているのではありませんか? 「自分が被害者」と思っている時、自分の感情は、加害者と思っている相手の言動、一挙手一投足に振り回される状態になっています。自分の感情なのに、相手次第。心の中心に相手がいて、その周りを自分がグルグル回っている状態だから、自分で感情の主導権を握れないんです。

――なるほど……相手の出方次第で自分の感情があちこち揺れ動く状態では、到底、自分自身でコントロールしようがありませんね。これを、自分を中心に据えてコントロール可能にしようということなんですね。

柊 そうなんです。「被害者意識」に慣れて、「うまくいかないのは、いつもあの人のせいだ」と考える癖がついてしまっていると、常に犯人探しを始めてしまいます。夫が悪いとか、あの出来事が悪いとか。そうするともう負のスパイラルで、「あぁ、私はやっぱり可哀想な人。誰かどうにかしてよ」という発想になってしまう。だから、怒ることで自分を正当化しようとしたり、加害者認定した対象を許さないことで、自分は正しくて相手は間違っていると世の中に訴えているつもりになったり。でもそれって結局、何も解決にはなっていない。自分自身が苦しみから解放されません。そうではなくて、人生の当事者意識を持ちましょう、と私は言っています。

――「当事者意識」を持つようになると、どんな変化が起こるんでしょう?

柊 「当事者意識」を持つことで、「人生で起こることは自分の責任だ」と腹を括れるようになります。「私がこれを経験しているのは、私自身が何千という中から選択した、ひとつひとつの積み重ねの結果なんだ」ということですね。そう捉えたうえで、「何があっても、自分の心の中の気持ちだけは、自分で手綱を握れるんだ」と自信を持つ。このように理解すると、ものすごいラクになるんですよ。ただ、その感覚を掴むまでは、ちょっとした練習をする事で考え方が変わります。

――それで上手に感情コントロールが出来れば良いですが、むやみに自分を責めてしまう恐れはありませんか?

柊 もちろんその恐れはありますよね。私の場合だったら、離婚によって娘から父親を奪ってしまったという罪悪感に苛まれました。自尊感情を失い、自分は自分のままでいいんだと肯定する気持ちが落ちてしまっている時は、悪いことが起きるたびに自分を責めてしまいがちになります。そうならないためには、自分の価値を高めにキープしておくことが重要です。

――どのようにして……?

柊 これは難しくて、自尊感情は一朝一夕でグンと高くなるわけではないじゃないですか。それこそ、小さい頃の記憶だったり、学校の先生や友達にこんなこと言われたとか、本当に根深いものなんです。でも今からでも自尊感情を高める方法はあります。

――教えてください!

柊 3つの質問に対する答えをリストアップすることです。まず1つ目は、「今まで成し遂げてきたことは何か」。何でもいいんです。小学校の時に何か作文や校内の絵画展で賞を取ったとか、合唱コンクールでピアノ弾いたとか。大人になって、就職できたこととか、転職に成功したとか。もっとずっと忘れがちな小さなことでも何でもいいんです。だって、どれだけ本人がささやかなことだと思っていても、全く知らない他人から見たらすごいことですから。あなたは自分が思っているよりも結構すごいんですよ、ということを、最初の段階で知ってもらいます。

――自分に対して厳しい目線ではなくていいんですね。2つ目はなんでしょう?

柊 2つ目は、「どんな困難を乗り越えてきたか」。何十年も生きていれば、多かれ少なかれ、みんな、何かを乗り越えてきています。その時は、到底乗り越えられないと思っていたことも今、こうして乗り越えてきている。それは自分があの時、頑張ったんだよねって理解すること。これも決して、大きな困難でなくていいんです。大病を患ったとか借金を背負ったとかじゃなくて。

――逆上がりができたとか、中学や高校、大学の受験勉強を頑張ったとか、部活動とか、友人関係でもめたとき乗り越えたとか。人との別れもそうですよね。3つ目は……?

柊 最後の3つ目は、「人から言われて嬉しかった言葉をリストアップする」。最近のものでも、昔の記憶でも。この3つのことを書き記した紙は、心が健康な時は、何の役にも立たない紙なんですけど、自尊心が落ちた時ほどプライスレスな処方箋になります。その紙を見直して、「だから次もきっと大丈夫」と勇気付けられるのです。

――自分がダメな人間ではないということを、思い出させてくれる紙ですね。

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