負の感情をゼロにする必要はない
――近著『「嫉妬する女はブスになる」問題』(サンマーク出版)では、嫉妬という感情に焦点を当てていますね。感情コントロールで「嫉妬しなくなる」んですか?
柊 嫉妬しなくなるというよりは、嫉妬に振り回されないようになる、ということ。感情に、良いも悪いもないんですよ。
――喜怒哀楽の「喜楽」が良い、「怒哀」は悪い、という気がしていまいますが。
柊 怒り・不安・嫉妬ってネガティブなものですから、「ゼロにしなくちゃいけない!」と思いがちですが、ゼロにしてはいけません。これらの感情ってすごく大切なもので、そもそも自分の身を守るために湧く感情なんですね。脅威が近づいてきたときに、逃げなきゃ、大切なものを守らなきゃ、等と思えるのは、怒り・不安・嫉妬があるからこそなんです。完全にこれらを感じなくなってしまったら、身を守れません。ゼロにするのではなく、上手に付き合っていく。振り回されるんじゃなくて、自分がコントロールしていくという意識を持つことが一番大切ですね。
――感情を押さえ込む、というのとは違うんですか?
柊 違うんです。押さえ込むと、いつまでたっても悶々してしまい、解決に至りません。まずは、そうした感情を自覚した時に、勇気を持ってその蓋を開けて見る。怒りも不安も嫉妬も、自分で見つめることです。そして、一体自分は誰に、何に怒っているのかとか、何に不安なのかを、紙に書き出します。根っこを知ることが大事なのですが、根元は意識しないと見えないもの。たとえば怒りだったら、本当は怒りの下に寂しさだったり、焦りだったりといって別の感情が隠れていたりする。大切なのは、その奥にある感情をどうにかすることなんですよね。なので、怒りをゼロにしたり蓋をしたりせず、怒りの奥に何があるのかを見つけることがとっても大事ですね。それを受け入れられないと、いつまでも被害者意識が強いままで、他人に振り回される人生になりかねません。
――著書には「90秒」は嫉妬しても問題なし!とありますが、なぜ90秒なのでしょうか。
柊 アメリカの脳科学者、ジルボルト・テイラー博士が発表されたことを根拠にしています。感情に関する神経伝達物質が脳から分泌されて、血流からその物質の痕跡が消えるまで、90秒。その全てが90秒以内に終わるとされています。ですから90秒以内にその感情をどうにかしようとしても、それは無理。だから90秒間はむしろ、嫉妬とか怒りを、ありのままに観察しましょう。アンガーマネジメントを身につけることで、90秒後、そうしたムカムカやイライラが静まるようになります。90秒過ぎてもまだおさまらない場合は、イライラする回路が機能し続けるように自分で“選択”をしてしまっているだけ、という考え方ですね。
怒りへの対策は、2015年の著書『「感情美人」になれる7つの扉』(光文社)で、タイプ別に詳しく解説されている。たとえば、こうだ。
■一瞬にしてブチギレる激しい怒り方をするタイプの人
<怒りの日記と点数づけを習慣化する>
簡単な日記を書く要領で、頭にきたことの内容(出来事、そのとき自分が思ったこと、相手にしてほしかったこと、点数)を紙に書く。0点を平静時、10点を最大の怒り心頭時として、その内容に点数をつける。王道の怒りコントロール法。そのほか、「その場を離れる」「今ここにいる目的を考える」などがある。
他にも、「ちょっとした刺激に敏感に反応し一日何回もプンプンしているタイプ」には<怒り以外のネガティブ感情に気付く>、「過去の怒りを長く引きずってしまうタイプ」には<記憶は変わることを自覚する>など細かい対策が。詳しく知りたい方は同書を手にとってみてほしい。
インタビュー後編では、柊さん自身がどん底メンタルから這い上がるために取り組んだ実践的なステップを伺います。