男性はお姫様がお好き?~映画に見る男性のプリンセス願望

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空から降るプリンセス

 ウィリアム・ワイラー監督の『ローマの休日』(Roman Holiday, 1953)はお姫様ものの古典です。ヨーロッパ某国の後継者アン王女(オードリー・ヘップバーン)がローマで公務を抜け出し、アメリカ人新聞記者ジョー(グレゴリー・ペック)と恋に落ちます。ロマンティックで機知に富んだ展開と絶妙な配役のため、古い映画ですがとても人気があります。

 上品で天真爛漫なアン王女は非常に魅力的で、女性の憧れとなっています。しかしながらよく見てみると、この映画は少々男性に都合のいい映画です。ジョーはたまたまプリンセスを道で拾い、「これはスクープになる」と考えて彼女と共に行動します。しかし世間知らずな彼女に振り回されているうちに、次第に惹かれるようになり、結局、二人は相思相愛になってしまいます。基本的な設定だけなら、空から女の子が振ってきて主人公が振り回される『天空の城ラピュタ』(1986)とそんなに変わりません。『ローマの休日』はだいぶ大人向けなので、性交渉を暗示する表現も(さりげないですが)ありますし、ジョーは愛のためスクープを諦め、アンが国家への責任のため愛を諦めるというふうに両者が精神的な成長を経験して別れる苦い結末もありますが、とはいえ、男性のプリンセスに対する憧れが窺える展開ではあるでしょう。

 昔から映画ファンの間で囁かれている噂として、この作品は新聞記者、つまりジョーと同じ仕事をする男性にとても人気だと言われています。映画の投票企画などでもこの映画には新聞記者からの投票が多いそうで、どうもジョーの立場に身を置いて楽しんでいる男性がいるようです(文藝春秋編『洋画ベスト150』文春文庫、1988、p. 47)。なんだ、やっぱり男性もプリンセスに憧れているんじゃないですか!

 プリンセスと平民男性という話は人気があり、最近日本公開されたジュリアン・ジャロルド監督『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(A Royal Night Out, 2015)は『ローマの休日』から強い影響を受けています。これは1945年、第二次世界大戦のヨーロッパ戦勝記念日にエリザベス王女(現在の英国女王)とマーガレット王女がお忍びで外出したという史実を大幅に脚色したもので、兵士ジャック(ジャック・レイナー)とエリザベス王女(サラ・ガドン)の淡い恋をフィクションとして織り込んでいます。妹とはぐれたエリザベスを助けたジャックは、最初は相手が王女だと気付きません。エリザベスが身分を明かすとジャックはひどく驚き、怒ったかと思うと少し嬉しそうにするなど、若者らしい反応を示します。危うく脱走兵になるところをエリザベスに車で兵舎まで送ってもらい、一夜のデートの余韻をかみしめて点呼に戻るジャックの姿は、男性が高貴な女性に対して抱く憧れを体現しているかのようです。

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