連載

両親が離婚して「本当に好きな人」と再婚…大人の恋愛を描いた『ママレード・ボーイ』

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トレンディな暮らしぶり

 物語は、主人公である女子高生・小石川光希の両親、仁&留美がにっこり笑って離婚宣言するところからはじまる。後述していくが、ちょっとトレンディドラマ仕立ての少女漫画だ。

 仁&留美は、光希を置いて出かけたハワイ旅行で知り合った松浦要士&千弥子夫妻と意気投合、どころかお互い相手のパートナーと恋に落ちたという。つまり仁&千弥子、要士&留美で恋をしたわけである。片方だけだったら浮気だの不倫だのドロドロの事態になるところだが、夫婦同時に恋する相手が見つかったのだから問題ナシ、いっそパートナーを交換して再婚しよう、と合意したというのだ。これに娘の光希は大反対。昔から少々変わったところのある両親だったけど、今回ばかりは許せない、交換結婚なんていう社会常識からはずれたマネをするのを見過ごせない、と怒りを露わにする。

 光希のキャラクターは、明るく元気、単純な性格、部活は中学から続けているテニスと、ごく普通の女の子。通っているのは中学から大学までエスカレーター式の私立桐稜大学附属高等学校。親友の秋月茗子や男友達の須王銀太に囲まれて、高校生活を楽しんでいる様子。気取らず裏表がない素直な光希は、りぼん読者が親しみを持ち、応援したくなるタイプだったといえる。

 小石川家と松浦家(両親ズ)で初会食をする日、光希は彼らの交換結婚を断固阻止してやると決意してレストランに向かう。そこに、松浦夫妻の息子である松浦遊が遅れてやってくる。光希と同じく高1、かっこよくて笑顔がかわいい遊に光希はどきっとするものの、両親ズの交換結婚に「本人たちが納得してんならいいんじゃねぇの」と異論のない様子の彼に唖然とする。「非常識な両親だけどあたしのパパとママなんだからどっちかと別れなきゃなんないなんてやだ」と訴える光希に、両親ズは「心配することない」という。なぜなら、広い家を借りて6人で一緒に住もうと思っているから。つまり、離婚&再婚で夫婦関係は変化するけど親子関係は変わらずに同居。今まで通りの組み合わせを両親と思えばよく、光希と遊は戸籍上父親側に引き取られたことにすれば苗字も変わらず面倒じゃない、いいプランでしょ? と。両親ズは本当に離婚、半年は再婚できないため、引っ越した家には二組の元夫婦とその子どもたちが住むという、珍しい構成の6人生活がはじまる(光希の語りでは「異常」と表現されている)。さらに遊は、光希の高校に転入、クラスも同じ。同じ家に住み、同じ学校に通うことになった光希と遊に、恋の気配を感じて読者はドキドキしたものだ。

 はじめは交換結婚や6人で暮らすことを渋っていた光希だが、変な家族だけどひとりひとりはいい人たちで何だかんだいいながらも新しい家族の生活に馴染んでいく。本作のメイン舞台のひとつ「小石川&松浦家」では、リビングやダイニングに6人が集まってワイワイ、という光景が度々描かれる。みんな(とりわけ両親ズは)やたらと楽しそうで、その光景は当時流行のトレンディドラマに通じるものがあるように思う。テーブルのお菓子は、両親ズのいずれかの出張みやげなのかもしれない。仁は銀行員、要士は商社マン、留美は化粧品メーカー(宣伝部)、千弥子は洋酒メーカー勤務と、彼らはそれぞれ仕事を持ち、帰ってきたら気の合う配偶者、友人夫婦(元配偶者でもある)、年頃に成長した子どもがいる。光希も遊も問題児タイプではなく親の手を煩わせることは少なそうだし、子どもを学費の高そうな私立一貫校に通わせ、自分たちはハワイ旅行に行くくらいだから、収入もそれなりにあるだろう。両親ズ、羨ましい。

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