連載

両親が離婚して「本当に好きな人」と再婚…大人の恋愛を描いた『ママレード・ボーイ』

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成熟した大人たちは自由だ

 光希の男友達・銀太と、遊の元カノ・鈴木亜梨美の横やりを受けながら、両思いの恋人同士になった光希と遊。両親ズには内緒だが、両親ズの不在時には家でイチャつくのを楽しんでいる。この幸せがずっと続くとふたりは思っていた。が、高3のクリスマスを目前にして、ふたりの幸せは崩壊する。

 クリスマスツリーを出そうと物置を探っていた遊は、若い頃の両親ズが4人で映っている写真を見つける。彼らはハワイ旅行で初めて知り合ったのではなかったのか? さらに写真の中の4人は、カップル×2。元夫婦ではなく、仁&千弥子、要士&留美という、現在のカップルと同じ組み合わせであることが一目瞭然であった。交換結婚より前の時点で、自分は要士の息子ではなく、千弥子と前の恋人との間にできた子どもだということを「知って」いた遊は、親戚を通じて耳に入っていた、千弥子に学生時代から付き合っていた恋人がいたこと、結婚前に恋愛問題でゴタゴタがあったことなどの情報を総合し、悟る。自分の本当の父親は、光希の父親の仁ではないかと。つまり自分と光希とは、血のつながった兄妹なのだと、遊は思い込む。

 思えば交換結婚も、初対面の夫婦同士でありながらそれぞれ相手のパートナーと恋に落ちるなんて都合がよすぎるが、それぞれが昔の恋人同士だったのなら腑に落ちる。合点がいった遊は、光希に気持ちが冷めたと一方的に別れを告げる。両親ズを責めたり光希にこのことを伝えて家族がバラバラになるよりも、自分ひとりの胸にしまっておくことを遊は選んだ。読者はやきもきする。遊、ひとりで抱え込みすぎ。しかしポーカーフェイスのママレード・ボーイである遊は京都の大学に進学し、家を出る。光希はエスカレーターで附属大に進み新しい生活を始めるが、遊を忘れられるはずもなく、それは遊も同じであった。夏休み、帰省した遊に「あたしが好きなのは今でも遊だ。遊の気持ちが冷めても、自分が遊を好きだという気持ちを大事にしたい」と告げる光希。ここへきて堪えきれなくなったのか、遊は光希に、別れを選んだ理由、自分たちが兄妹であることを告げる。当然、光希はショックを受け、どうしてこんな大事なことを黙っていたのかと両親ズに確かめようとするが、遊は止める。あきらめるしかないのは変わりないのに、暴き立てたって家族がめちゃくちゃになるだけだ、と。どこまで物分りのいい息子なんだ。だが、最後の想い出にとふたりで出かけた旅行が終わりかけた時、遊はついに覚悟を決めた。「結婚しよう」と光希に告げる。血のつながりなんてかまわない、常識だってモラルだって破ったっていい、光希と生きていくためなら何だってやる、と。何もかも自分で抱え込もうとして、胸に秘めてしまう男・遊が成長した瞬間である。要士が自分の父親ではないとしても両親に感謝しているという遊だったが、両親への恩を大事にするあまり家庭崩壊を極端に恐れているようにも見えた。そんな彼が、両親よりも自分がどうしたいのかという気持ちをストレートに表し、決断を下したのだから、『ママレ』の物語で成長を遂げたのは光希よりも遊であったように思う。

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