社会

性犯罪の非親告罪化が問うているのは、私たちの態度ではないか

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性的事件の申告率は13%しかない

刑事訴訟法247条を見ると、加害者を起訴するか否かを決定する権限は検察官が所有していることがわかります。しかし被害者の意思によらずに起訴されて事件が公になることで被害者のプライバシーが侵害され、被害者がさらに傷つくような場合があります。その代表的な犯罪の一つが性犯罪でしょう。

性犯罪・暴力は、他の犯罪に比べて被害を明かしにくいという性質があります。例えば「犯罪被害実態(暗数)調査」によれば、「性的事件」の申告率はたったの13.3%しかありません。強姦(未遂)を含む申告率は65.6%、暴行・脅迫は36.8%ですから、相当な暗数があると考えられます。ただし、この調査における「性的事件」は、強姦や強制わいせつなど法律上処罰の対象になるもの以外の性的に不快な行為も含まれているためあくまで参考値でしかないことは注意ください。

暗数が多い理由として考えられるのは、レイプ神話などのスティグマを恐れる(「見知らぬ人に襲われる」「加害者は家庭環境に問題がある」セカンドレイプを横行させる「レイプ神話」のでたらめ)、被害者自身にも落ち度があると考えてしまう、加害者からの報復を恐れる……など複数あげられるでしょう。

こうした中で、被害者に起訴を決断させることは、「自分も悪かったのではないか」「犯人が罰せられてもレイプされたことに変わりはない」「事件が公になることで周囲から冷たい視線を送られるのではないか」などと逡巡させることになります。この負担は相当なものでしょう。

法制審議会の答申では、この被害者の負担を軽減することを目的に非親告罪化が提案されているわけです。また、家庭内で行われ「親だから……」と起訴をためらう子供や、被害者が幼かったために被害が明らかにされづらい性加害についても非親告罪化は有効な手段になると思います。

社会は、非親告罪化に備えられているのか

たとえ非親告罪化したとしても、被害者が望まない形で事件が公になることはもちろん避けなければなりません。「性犯罪の罰則に関する検討会」「刑事法(性犯罪関係)部会」でも、非親告罪については、慎重に議論されていました。

例えば、「法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第7回会議 議事録」では、非親告罪化した場合、「告訴を取り消す」という選択肢が被害者になくなることで、これまでとは違う精神的な負担が受けるのではないか、という懸念が示されています。

つまり、非親告罪化によって、今まで以上に被害者をサポートする環境を整備していく必要があるわけです。これは非親告罪化した場合、必須のものであり、法改正される際に、捜査や裁判における被害者のケア、被害者支援の強化など、環境整備の必要性を強調することが重要になるでしょう。

法が改正されたからといって必ずしも被害者が救済されるわけではありません。そもそも性犯罪の被害者が起訴できるような社会になっていれば非親告罪化は必要なかったかもしれません。法律だけでなく、社会の側が性犯罪に対してどのような態度を取るのか、今後試されるのだと思います。
(水谷ヨウ)

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