連載

自然派ママは「社会が求める母親像」への過剰適応? 母性の証としての不便や不自由

【この記事のキーワード】

「彼女たちが絶賛している生活クラブ生協に加入して美味しくて安全な食品が手に入るようになりました。ニンジンやレンコンは本当に美味しいです。牛乳もサラっとしていて美味しいです。(彼女たちは注文してませんが、生活クラブには牛乳も卵もお肉もあります)冷凍のお惣菜もたくさんあり、材料が安全なのですごく助かっています。それから、彼女たちはさすがにのびのび子育てのいい情報を共有しています。絵本屋さんや遊び場などいいところを教えてもらえありがたいです」

 そう、まさにこんな感じ。基本的には皆さん、勉強熱心なだけあって持っている情報が多いし、アクティブで良い人たちなのだ。その一方で、モヤモヤと感じる違和感について、トピ主は「自然派ママさんたちが『私たちは他の人より一歩先のことを知っている』という自信満々なところに戸惑います。そんなところがちょっとイヤです」と分析。こうした愚痴&相談トピを立てはしたものの、自然派ママさんたちとは穏便に関係を続け、彼女らの良いと思うところは取り入れていきたいという。コメントでも「『いいことは取り入れる』、それが一番ですよね~」「ま、ほどほどがいちばんだと思います」「我が道を行きましょう!」とそれに賛同する声が多い。

 医療拒否などをトピ主など周囲の親にも強要してこなければ、確かに実害はない。ただ、彼女らが反予防接種というのは気にかかる。病気に感染して免疫をつけたいという考えなのだろうが、ワクチンで予防できる感染症を撒き散らすことになり、免疫力の弱い子供や高齢者、妊娠中の女性などにとっては恐ろしい存在だ。そのあたり、トピ主は問題視していないようだが……。

 テレビ・洗濯機・冷蔵庫が三種の神器と呼ばれた時代から半世紀以上が経ち、家事も育児も手間をかけずに出来る部分が増えた。乳児用のミルクひとつとっても、電気ポットでお湯が沸かせて、保温性能の優れた魔法瓶で外にも持っていけて、パック入りのキューブ型ミルクもあって、哺乳瓶は電子レンジで消毒できて……と、お母さんが苦労して母乳マッサージしまくったり、眠い目をこすってミルクを計量したりしなくても、何とかなるもんである。離乳食だって、種類豊富なベビーフードが販売されている。

 にもかかわらず、母親は苦労してなんぼ、子供のために知恵を絞って体を削って一人前、愛情があれば出来るはずで、子供にも愛情は伝わる――という母性幻想は、なかなか消えない。自然派ママたちのハードコアな実践は、こうした母性幻想と無関係ではないと思う。社会は母親となった女性に対して“母性幻想”を抱き、それを押し付けている。出産すら、自然分娩で“痛みを乗り越える”ことが母親になる第一歩なのだという見方もまだある。産んだら産んだで母乳育児礼賛の風潮に揉まれ、外出時にベビーカーを使うと他の乗客から冷たい対応をされ、保育園に子を預けると「子供がかわいそう」。出先でスマホを触ろうものならバッシングの嵐である。いや~、文明の利器を使って何が悪いんですかね……。

 社会全体が“母となった女性”に対して、母性の証として不便や不自由を強いるのだ。何よりも子供の健康を気にかけて、無添加・無農薬の食品に金と手間隙をかけ、自然素材のおもちゃで遊ばせ、薬を飲ませず、予防接種を受けさせず、愛情たっぷりに子育てをする自然派ママさんは、おそらく、こうした社会が理想としている母親の姿であり、日本社会が求める母親像に対して母親が過剰適応した結果なのではないか。

1 2 3 4

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。