不動産の名義変更には、譲渡と売買の2つの方法がありますが、譲渡すると多額の贈与税がかかります。一方で売買の場合は譲渡と見なされないよう、市場価格とかけ離れていない金額を設定する必要があるので、購入側に資金が足りない場合はローンを組むことになります。
このローンを組むのが困難で、金融機関は親族同士の不動産売買資金の融資には積極的ではなく、審査にもあげてくれない場合も。親族同士の取引と分かった時点でお断り、ということも珍しくありません。
――仲介会社をはさんだことで、スムーズに事が運んだのですね。
室井「担当者はがんばってくれたと思います。払ったお金を考えれば当然かもしれませんが。その仲介会社には、マンションを私が売る際の手数料、弟がマンションを買う際の手数料、そして私たち家族が新しい家を買う手数料を払っています。しめて360万円ぐらい支払ったでしょうか。『いろいろ動いてくださって感謝してます。でもその分お支払いもしてますものね~』って、担当者に言っちゃいました(笑)。でも、親族間の売買は半分あきらめていたことですし、転職したばかりの私と、雇用の不安定な夫が家を買うこともほとんどあきらめていました。その2つのむずかしい条件をクリアしてくれた仲介会社には感謝しています」
仲介料を払って、面倒を回避
たとえ購入した物件が家族構成に合わなくなっても、「売る」という出口があります。特に室井さんは、親族間で売買するというむずかしいケースを成功させました。そこでポイントとなるのは、仲介業者選びのようです。
仲介手数料は一般的に販売価格の3%プラス6万円といわれます。最近は手数料0円という仲介業者も増えていますが、通常は1000万円の物件で36万円もの仲介料を支払うところがゼロになる分、ローンを通すときなどに面倒が増える可能性もあります。
買う際にも売る際にもきちんと手数料を払うからこそ、仲介業者も親身になってもくれるもの。購入のときには「今度買う物件、いざとなったら売るときも面倒見てくださいね」と一言添えれば、担当者は将来の利益を見込んで、先々も人気の落ちない物件を紹介してくれるかもしれません。
(蜂谷智子)