
左『愛のことはもう仕方ない』/右『かなわない』
植本一子×枡野浩一
~かなわないことって本当に仕方ないのかな対談~
男性/父親からの離婚体験の心の痛みを書きつづけ、小説『愛のことはもう仕方ない』を発売した歌人・枡野浩一さんと、女性/母親として子育ての葛藤や恋愛を赤裸々に表現したエッセイ『かなわない』(タバブックス)が大きな反響を呼んでいる写真家・植本一子さん。
ふたりの大きな共通点は「自らの生活や生き様を堂々と語ること」――。ただその一方で、枡野さんは離婚後に子どもに会えないことに苦しみ続けてもいます。植本さんは自らの不倫恋愛を夫に打ち明けて、受け入れられ、今も家族を続けておられます。そんな似た者同士でありつつ好対照な、かなわない女と仕方ない男による全5回シリーズ対談「心から愛を信じていたなんて」。シリーズ総計全4万字を超えるたっぷりのボリュームでお楽しみください!
(尚、対談シリーズ中、対談構成担当者Fおよび編集担当G、さらにAV監督・作家の二村ヒトシ氏も対談に口を挟み、意見を述べられています。何卒ご容赦ください。同時に、様々な意見飛び交う対談模様をご堪能くだされば幸いです)
(構成/藤井良樹)
「植本さんには別れた奥さんと似た匂いを感じました」(枡野)
枡野 はじめまして、枡野と申します。
植本 はじめまして、植本です。ほんと、はじめましてですよね?
枡野 本当に今日はじめましてで。この企画(連続対談シリーズ)は今回で2回目なんですけれど、第1回目は紫原明子さん[注]という、家入一真さん[注]の元奥さんのコラムニストの方をお招きしたんですね。
植本 はい。
枡野 その紫原さんと僕は直に面識があったので、普通に(messy)編集部から(連絡)していただいたんですけど、橋本さん……や、植本さん――。
植本 ん?(笑)
枡野 ああっ、すみません!
植本 はい。ふふふ(笑)。
会場 (笑)
枡野 ぼくねぇ、漢字を頭の中で思い浮かべて読み間違える癖があるんですよ。
植本 え、あ、はい。だいじょぶですよ。
枡野 (作家の)大佛次郎さんとかも、「おさらぎ…おさらぎじろう……」と思いながら「だいぶつじろう」と言っちゃったりしちゃうんです。ほんとすみません。
植本 うん! だいじょぶです!
枡野 いま自分でもびっくりしました。なんで「はしもと」と言ってしまったんだろうと……。すみません、それで植本さんへは僕がお手紙[注](messy上での往復書簡)を書いたんですよ。
植本 はい!
枡野 その(ふたりの)文通がいまウェブ上(messy)で見れるんですけど、その(僕からの)手紙が届いて(対談を)引き受けてくださった感じなんですか? そういうわけでもなかったんですか?
植本 ああ~、う~~ん……や! お手紙よかったですよ! お手紙よかったですし、あと私、基本的に断らないです(笑)。
枡野 あ、そうだったんですか。
植本 ふふふふ……。ややや、う~んまぁでもそうですね、(枡野の著作『愛のことはもう仕方ない』[注]を)読んでダメだったらどうしようとは思ってたんですよ。でも読んで面白かったし、「あ、受けてよかったな」とは思っています。
枡野 ありがとうございます。今日それで差し入れをいただいたんですけど、これはどういう意味なんですか?
植本 ダッシュで買ってきたんですよ。(枡野の本の中に)葛湯がたくさん出てくるので……葛湯大好きじゃないですか? それで葛湯を買いたかったんですけど、西武百貨店の人に聞いたら「葛湯は冬じゃないから売っていない」と言われて。あ、じゃあ、どうしようと思って……。
枡野 それでこの白玉粉と……。
植本 はい。それでババロアにしようかとも思ったんですけど、ババロアの素って混ぜるだけみたいなので、そういうのってお好きじゃないだろうなって思って――
枡野 はい。
植本 ひと手間加えなきゃいけないものにしました(笑)。
枡野 なるほど。それでこの団子作ったりする……
植本 白玉粉と棒寒天。
枡野 ありがとうございます。
植本 とんでもない。白い液体の感じで揃えました(笑)。
枡野 ちょっと作ってみます。僕のほうはなにも差し上げずすみません。
植本 ああ、全然全然! なんか絵本(『あれ食べたい』[注])出されたみたいで、絵本いただきましたし!
枡野 お子さんはもう絵本読まれるようなお年じゃないんですか?
植本 読みますよ! 読みます読みます! うん!
枡野 そうですか、よろしくお伝えください、お子さんに……。
植本 あ、はい、え、いまなんて言われました?(笑)
枡野 よろしくお伝えください、お子さんに!
植本 あははは、子どもに! はい。
枡野 それで植本さんの本(『かなわない』[注])をね、だいぶ前から気になっていて、でも買うのを迷っていたんですよ。
植本 どうしてですか?
枡野 実は……こういうこと言うと、気を悪くされたらあれなんですけど……別れた奥さんと似た匂いを感じたんです。
植本 あっ、そうなんですね! どのへんから感じたんですか?
枡野 ん~、ちょっとパラパラッと見た感じが……ほんとうのところとか……自分に正直な感じとか……。
植本 うん、うん。
枡野 写真を撮られてるってことで、別れた奥さんも漫画家だったんですけど……。だから、あえて端折って言うと、「別れた奥さん、この本を読めばいいのに」と思ってるんです、いま僕。きっと参考になるし、いろいろ面白いと思うと思うんですよねえ。
植本 読んでるかもしれないですよね?
枡野 もう読んでるかもしれない。
植本 うんうん。読んでるといいですよね。私も読んでてほしいです。