父子絶縁の苦しみより、夫婦生活に耐えるほうがツラかったかも…幸せへの未練/枡野浩一×植本一子【3】

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枡野 僕は「枡野は元奥さんに未練あるんじゃないのか」とみんなに言われるんだけど、さすがに未練はもうなくて。元奥さんとセックスしたいとかじゃないんですね。幸せだった家庭への未練や子どもへの未練はありますけど。でも本当に未練があるとしたら、むこうが「子どもに会わせたい」と思ってちゃんと会わせてくれる、もしくは子どもが僕に会いたいと思って会いにきてくれる……そういうことの未練はあるんです。あるんだけど、でも女性の読者の方ほど、「枡野さんは元奥さんに未練がある」と言いたがる。それは未練があると思いたがってるのかなぁと思っちゃうんです、僕。

植本 うーーん、会えそうにないですね。

枡野 直感で?

植本 すごくQ太さんは枡野さんを嫌になっちゃったんでしょうね。

枡野 それは、植本さんもこうだったら「嫌だな」思います?

植本 詳しいことは本人じゃないからわからないですけど……。でも、Q太さん、すごく強い人ですよね。枡野さん、すごく優しくて弱い人ですよね。

枡野 まぁ自分は自分で、なんてわがままなんだろうって思うようになりましたよ。でも当時は奥さんのことを「なんでわがままなんだろう」って思ってましたけど。言いましたけどね、「あなたはわがままだよ」と。

植本 どうすればよかったんでしょうね。「来てくれればそれは受けますよ」って感じは元奥さんにもあったと思うんですよ。

枡野 じゃあ子どもにでも無理やりにでも会いに……。

植本 無理やり……う~ん……。

枡野 こっそり見に行ったことはあるんですよ。だから(子どもに)話しかけることはできなくもなかったんだけど、でも修羅場にはならないようにしてって思ってたから、遠くで見守るようなだけにして……。そうこうしえるうちに引っ越されたりしちゃったので。

植本 う~~ん。わかんない。もっと手前の問題のような気がします。

「ただの捨てられただけの夫になりたかったよ!」(枡野)

構成担当F 植本さんに質問させてください。僕は枡野さんの古い友人で親しい仲なので「マスノ~、もう離婚話禁止!」とか冗談でツッコんだりしますが、本音の部分では、「6歳の娘と3歳の息子と生き別れになったまま13年間も会えないのは本当に切ないだろうな」と思っています。ところがですね、僕と枡野さんの共通の知り合いの女性たちとか、あとこれまでの枡野離婚本/離婚コラムの感想などでも女性の方々は、枡野にとても厳しいんです。「枡野さんが離婚されるのは仕方ないと思う」と言われる女性が本当に多い。その一方で、男たちも枡野さんに対して「ぐじぐじいつまでも離婚を引きずるな!」などと文句は言います。でも僕自身は男なので余計に思うのですが、それは男がマッチョぶりたいからじゃないかなと。心の底では枡野に同情する面もあるんじゃないかと。それでも男たちが枡野を批判するのは「枡野を擁護すると女たちに嫌われる! いいことない!」と心の底で恐れてるからじゃないかとさえ思うくらいで(笑)。

それで結局、僕はなぜ女性たちが「離婚男としての枡野」を嫌うのかが本当にわからないんです。ずっと疑問なんです。植本さんはさきほど「直感」で「枡野さんは息子さんと会えそうにない気がします」と言われましたよね? その「直感」ってなんなのでしょうか? 僕は男だから、その直感がわからないんでしょうか? そのあたりすごく知りたいのでよろしくお願いします。

植本 直感っていうのは……。あの枡野さんの人となりをまだよくわからないんですけど、本を読む限りでは「まだ引きずっているのか」というのもありますし。もしこれ、枡野さんが石田さん・南Q太さんが私・離婚も十数年前にした・なのにまだ書かれてる……ってなったら、さすがに怒るというかキツいと思うんですよね。飯の種にされてる、もう終わったことなのに……っていう。もちろん、13年間子どもに会えない、かわいそうってのはありますけど……。直感でわかるといえば、私は南Q太さんの気持ちがどっちかというとわかるので……。

構成担当F じゃあなぜ南さんは子どもに会わせてくれないんですか?

植本 ほんっとに嫌になったんでしょうねっ!……っていう感じです。ほんと――に嫌になったまま、ずーーっと来てる。

構成担当F 最初のうち単純に考えたのが、「これは元奥さんから元ダンナへの嫌がらせなんだろうな」と。

植本 嫌がらせ……。

構成担当F でも逆に、嫌がらせだけでこんなに長く続けるかなとも思うんですね。

植本 ほんとにもう「関わりたくないっ!」ってこと……ですよね。

二村監督 僕も意見いいですか。嫌がらせってね、本当に嫌になった人はしないよ。だから、嫌がらせの意図ではないでしょう。

構成担当F そうですか……。嫌がらせは愛情の裏返しだから?

植本 う~ん、だからふたりの間になにがあったかわからないですけど。もう終わったことと言うか。ね、ふたりにしかわからないことですから。ただ「会わせない」っていうのはけっこう極端というか……。本当に……ほんとに自分だったら、「関わりたくないからブッチしてる!」ってこと……です。

構成担当F 枡野さん的には、十年以上会わせてもらえないから十年以上ぐじぐじ書き続けてるんですよ。なんか僕、枡野さんの弁護士みたいになってますけど。

会場 (笑)

構成担当F それで、前回に枡野さんと対談した紫原明子さんはこういうことを言われたんです。「私は許すことが最大の復讐だと思う」「『家族無計画』を書くことで私は元夫を許しました」「自分も本を書いたことえ驚くほどスッキリして、過去もどんどん忘れていきます」――と。それに対して枡野さんは「僕は離婚をしたことがまるで先週のように思える」「あまりに会えないから、もう息子が神様みたいに思えてきました」って。かなりヤバいですよね? だからもう早く、枡野さんに息子さんを会わせてあげろよって思うんです。

植本 会いたくないんですよ。

構成担当F それは元奥さんが? だったら息子さんだけ会わせるとか……。

植本 強いですよね、だから。Q太さんはすごく。うん。

枡野 あの……この本(『愛のことはもう仕方ない』)にね、(読者の女性の方から送られてきた)「私も別れた夫と子どもをずっと会わせてなかったけど、ついに会わせたら泣かれてしまいました」って内容の手紙のことを書いていて。あれ、本当にきた手紙なんですよ。当事者が誰かわからないように少し変えてあるんですけど、まぁ文面は同じです。ああいうふうに手紙に書かれると、そんなに懇切丁寧に書かれた内容じゃなくても、「ああ、こんな考え方もあるんだ」ってむしろ僕はほっとして……。夫が好きだったけどいまは嫌いになっちゃって、でも(会わせていなかった元夫と子どもを会わせたとき)もう自分だけ悪者になっちゃって、子どもと元夫は泣いてると。私は泣くとこがなかった……って。なるほど、そういうふうになるのかって。なんとなく、そういうことが知りたいんですね、僕はね。でもずっとそういうことを誰も言ってくれないし、(元奥さんからも)なしのつぶてだから、もしこだわりがあるとしたらそういうことへのこだわりで……。息子には毎月会えて、小学生になったら泊りがけもOK――という契約書も交わしていたんだけど、もしそういう暮らしができてたら、「今日忙しいんだけど息子に会わなきゃなんない!」とか、「打ち合わせあるのにな~」とか「子どもと会ってもなに話していいかわかんない」とか、そういう日もあると思うんですよ。(息子がプロ棋士を目指していても自分は)「将棋とか興味ないのにな~」とか。そういうのが憧れだったんですね。だから(枡野の著作)『結婚失格』(文庫版)[注]の町山智浩さんの解説でね、《もし(子どもに)会うことができたら?》《ただの妻に嫌われただけの夫だ。》と書かれてて、「そうなりたいよ!」と思ったんですよ。

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