『フリースタイルダンジョン』(日本テレビ系)をきっかけに新たな盛り上がりを見せているHIPHOPシーンの中で、ひときわ存在感を放つフィメールラッパーがいる。彼女の名前はCOMA-CHI。日本最大規模のHIPHOPイベント「B-BOY PARK」における女性初の準優勝、日本語ラップクラシックと評される名曲「ミチバタ」など、彼女の数々の印象的なアクションは私たちを魅了してやまない。今回、活動10周年記念ベストアルバム『C-10』を上梓したばかりのCOMA-CHIに、「フィメールラッパー」という生き方について話を聞いた。
少女漫画に自分の姿を見つけられなかった仲間たちのため
――『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』(BSスカパー)や『フリースタイルダンジョン』(日本テレビ系)をきっかけに、HIPHOP、特にビートに乗せながら即興で言葉をぶつけ合うMCバトルが盛り上がっています。ただ、残念ながらMCとして参加する女性を見かけることは男性ほど多くはありません。今回は、今年で活動開始10周年を迎えられ、10月5日にベストアルバム『C-10』をリリースされたCOMA-CHIさんに、「フィメールラッパー(女性ラッパー)」「女性の生き方」などのお話をお伺いします。最初に、そもそもCOMA-CHIさんは「フィメールラッパー」という自意識をお持ちなのでしょうか?
COMA-CHI 最初は意識していなかったんですけど、キャリアを重ねていくに従って、周りから「フィメールラッパーは少ないから頑張って欲しい」という期待のしてもらい方をして、「あ、フィメールMCとしての立ち位置っていうのがあるんだな」と後から気付いていった感じですね。この10年で、フィメールラッパーというよりも、自分自身への扱いは確かに変わったとは思います。最初は、「ごろごろいる男のラッパーの中に紛れている変わった女」みたいな感じの扱いでした。それが自分の作品を残して自分のスタイルを構築していく中で、いちアーティストとして扱ってもらえるようにはなったのかなと。
――「B-GIRLイズム」(メジャーデビューアルバム『RED NAKED』収録)の「少女漫画のなかにうしろ姿 見つけられなかった仲間達のため」という歌詞が強烈でした。少女漫画の中に感情移入できなかった、つまり「“普通”の女の子ではいられなかった」みたいな感性だと思うんですけど、「普通の女の子像から離れた」という意識をお持ちなのでしょうか。
COMA-CHI うーん……そうですね……自分に素直に生きてたら、結果女性らしいものがあんまり好きではなかったんですね。自分の性別に違和感があるとか、女性が好きだとかそういうことじゃなくて、小学校高学年ぐらいからいわゆる女性らしいものよりも男性っぽいカルチャーにハマるようになっていたんです。例えば、親が可愛い服を頑張って着させようとしてくるけど、自分はエアマックスが欲しい……とか(笑)。「何で欲しいものを買わせてくれないんだろう」「女性という枠にはめられるのかな」って苛立ちはありました。
――社会的な扱いとしての「女性」に違和感があったということですね。「数少ないフィメールラッパーだから頑張って」というのも「女性」という色眼鏡で見られてることだと思うのですが、憤りは感じなかったのでしょうか?
COMA-CHI んー……そうだな、「女性少ないから頑張って」って言ってもらうことに関してはあんまりなかったです。ただ音楽の趣向が全然違うのに、まるで「女性ラッパー」というジャンルがあるみたいに、全く違うタイプの音楽をやっている人と比べられることに対する違和感はありましたね。
一括りにラップと言っても、ポップなものもあればハードコアなものもあれば、バラエティがあります。男の場合は、それらがひとまとめにされることはあまりないと思うんですけど、「女」ってだけで同じようなものとして比較されたりするのは不思議です。やっぱり「女性ラッパー」じゃなくて、いちアーティストとしてみてもらいたいですね。