『逃げるは恥だが役に立つ』人は何のために結婚するのか。契約結婚で「主婦」に就職したみくりを駆り立てるものとは

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見合い結婚した女性の満足度は急激に下降する

そもそも「結婚」とは一体何なのでしょうか? この問いに対する答えを探そうと、しばしば行われてきたのが、見合い恋愛の違いに関する研究です。広く知られているように戦前の日本においては見合い結婚が主流でした。NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」などでも取り上げられていたように、見合いで結婚していた時代は当事者であっても結婚式当日まで面識すらないことも珍しくありません。なぜなら、結婚する二人の感情は現在のように重視されておらず、嫁が家業を覚えることと子供をもうけることが結婚の基本的な目的だったからです。

見合い結婚といえば、仮に本人同士の関係がうまくいかなくても、周囲に支えられて家族関係の継続はできるような印象を持ちますが、実は離婚やできちゃった結婚が多かったのが戦前です。その理由は、嫁ぎ先の仕事や人間関係に馴染まないという理由で離縁されたり、子どもができたとわかってから法的な手続きを進めるケースが多かったためだと言われています。結婚をめぐるこのような状況の背景には日本の「イエ」制度があります。家長がリーダーとなって「イエ」を統率し、他の者はそれに従うという「イエ」制度は、武士や荘園に代表されるように、家産を守り次の世代に受け継がせるという背景を持っています。当時の女性にとって、結婚とは嫁ぎ先の「イエ」に就職するという意味合いを持っていたともいえるでしょう。

しかし戦後の憲法改正や恋愛の自由化などを経て、恋愛結婚が主流へと移行する様子は統計調査でも明らかにされています。1940年代には7割程度だった見合い結婚の割合は1960年代後半に半分程度になり、現在では1割を切る水準になっています。

家族社会学では見合い結婚と恋愛結婚の比較という観点から「イエ」制度の変容を把握するというアプローチが数多く行われていますが、その中のひとつにアメリカの社会学者ロバート・ブラッドが1950年代末に行った調査があります。見合いが中心だった当時において、見合いと恋愛の比較を行ったデータは貴重なものです。今回はブラッドの著作から二つのデータをピックアップしました。

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図2は結婚期間の経過と夫婦関係満足度の変化について、男女別、見合いと恋愛別に比較したものです。結婚2年以下の段階では見合い/恋愛、男/女共にそれほど大きな違いは見られません。また、結婚年数の経過と共に夫婦関係満足度が低下していくのも全てのカテゴリに共通しています。しかし、その下がり方がそれぞれで大きく異なっています。見合いの夫は2-4年でむしろ上昇傾向にあり、その後の落ち方も緩やかです。逆に見合いの妻は2年から5年の間で満足度が急激に下降し、どのカテゴリよりも満足度が低くなっています。

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両者の違いをさらに確認できるのが、図3で示した愛情表現の推移です。結婚後に相手に愛情を示す「遅ればせながらの求愛」は見合いであっても見られる状況です。しかし2−4年で急激に低下し、9年以降はほとんど見られなくなって行きます。

見合いでスタートした結婚がその後も継続しているということは、妻はある程度嫁ぎ先に適応して「うまくやっている」ものと予想できます。それでもこれだけ満足度や愛情表現に差があるのですから、見合い結婚の妻の苦労たるやかなりのものだったことが予想できるでしょう。「イエ」制度によってあらかじめ立場が守られている夫と外部からやってきた妻の違いをデータから読み込むことができます。これに対し、恋愛結婚の場合は妻の満足が夫の満足を上回り、その差も見合いほど大きくはありません。当時の社会において先進的だったと言える恋愛結婚は「都会的で知的な選択」という位置付けも持っていました。そこでは女性が大切にされていて、見合いとはかなり違う生活状況があったと考えられそうです。

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