
秘密結社のみなさん。
10月6日、日本財団にて、『主夫の友アワード2016』表彰式が開催された。これは父親の育児を支援するNPO「ファザーリング・ジャパン」内の組織である秘密結社・主夫の友が主催するもので、10月10日を「いい夫の日(1いい010おっと)」と定め、著名な主夫を表象する試みである。主夫の友の広報担当は、messyインタビューに登場してくれた兼業主夫・放送作家の杉山ジョージさんだ。
今年の受賞者は、リオ五輪で活躍した男子卓球メダリストの水谷隼選手(27)をはじめ、宮崎県日南市の﨑田恭平市長(37)、直木賞作家の朱川湊人さん(53)、ママタレントの草分けSHEILAさんである。
日南市の若きリーダー・崎田市長は、 5歳の長男、0歳の次男、妻と暮らす。今年2月、第二子誕生を機に、日南市における「ゆう」パパ運動の実施をスタートしている。「ゆう」パパ運動3か条、まず第一に市長自身がイクボスとして、「公務に支障の無い範囲内で、夕方から育児に参加する」。一週間の半分以上は夕方に帰宅し、長男を風呂に入れてからまた公務に戻るのだという。長男の幼稚園登園も、市長が出勤前に車で送り届けているそうだ。第二は、「市職員のパパも育児に参加します」。小さな子どもがいる家庭は、早く帰宅できるように仕事の仕方を工夫するよう通達しており、また、生後10週目までに5日間取得可能な「男性職員の育児参加休暇」制度を積極的に活用している。第三は、「市内で働くパパも育児に参加しましょう」。市内の各事業所にリーフレットを配布し、男性の育児参加の重要性理解を浸透させるとともに、育児休暇の取得を促進、時間をうまく確保して父親が育児に参加することを当然とみる社会の形成を試みている。
崎田市長は「制度が変わっても、風土が変わらなければ、現実には何も変わらない」と考える。だからこそその風土を変えるべく、自分自身が積極的に育児に参加し、休日の公務には長男を連れて行くこともあるという。まとまった休暇はなく土日祝も関係ない市長職だが、今年の夏は、「海びらきの神事」出席にあわせて、長男を三回、海水浴に連れて行くことができたという。神事の際、海パン・浮き輪・ゴーグル姿で市長のスピーチ終了を今か今かと待ち望む長男の姿を、ほかの職員やスピーチ登壇者も笑いながら見守っていたというエピソードは非常に良いものだった。幼稚園登園や風呂でのコミュニケーションが増えたことで、長男はグッと「パパっ子」になったようで、そうなれば父親側としても育児が楽しくなる。また、市長は「夜にまた公務に戻らなければいけないとしても、夕方に子供と風呂に入ることがとても良いリフレッシュになっている」と、仕事にも好影響を与えていると明かした。日南市は、“いい夫の日”である10月10日よりLIONとともに夫婦円満都市推進プロジェクトも展開している。
2005年に『花まんま』(文藝春秋)で直木賞を授賞した作家の朱川湊人さんは、今年5月に小説『主夫のトモロー』(NHK出版)を上梓した。タイトル通り、主夫男性の話である。朱川さん自身が、主夫として娘や息子の育児に深く関わった経験が生かされている。5歳の時に両親が離婚して以降、父と兄2人と生活していた朱川さんにとって、男性が家事育児をすることは何ら違和感のないものだったという。大学卒業後に就職するも、小説家の夢を追うべく27歳の時に退社、公務員の妻が働き自分は家で小説を書く生活を送り、誕生した娘・息子の育児もメインで担った。
朱川さんの奥様は今回の授賞に際して「すごいね。そしたら、私は『すごくラクした奥さんアワード』をもらったりしない?」と笑ったという。受賞者のトークセッションで朱川さんは20年ほど前、まだ幼かった子供たちの世話をしていた頃を振り返り、「公園なんかに子供を連れて行くと周りの目がすごく厳しかった。ママ友ができて話しているだけで、変な勘繰りをされた。男がそういうことをやるとカッコ悪いとも言われて、風当たりが強く……男はやっぱり、ええかっこしたい人が多いから、それもまた障壁」と話した。そんな20年前と比べて最近は、「男だからこうだ/女だからこうだ」という性役割分担が柔軟になってきているように思う、という。「育児グッズも便利になった。今では雑巾も100均で購入できるから良くなった。僕の頃は、チクチク雑巾を手縫いした(笑)」。
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