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厳格すぎる父親から逃れて、自立したかった…。マンションを買うことで人生を切り拓いた女性の半生

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――1軒目を購入されたのは31歳の頃。買うのは怖くなかったですか。

富樫「いえ。そんなことよりも、実家の厳格な父から逃れたい一心でした。家を買ったという重しを自分につけて、実家に連れ戻されないようにしたのです。ですからローンを組むのが嫌だという気持ちはありませんでしたね。母が『あなたは結婚しないみたいだから』と、300万円ほど援助してくれました」

ーーそんなに厳しいお父さんだったのですね。

富樫「それはもう、厳しかったです。30歳にもなっても、夜9時までの門限がありました。しかも会社を出るときと、最寄り駅に到着したときと、2回家に電話をしなければなりません。それに遅れると父親が職場の上司に電話をかけてくる。父親曰く、残業で遅くなったらハイヤーで帰すのが“子女を預かる会社の責任”だとか。そんなにお嬢さまなわけでもないのに、何を言い出すのかと……。父親から電話がかかってくるような社員だと、上司も使いづらいですよね。そのままでは、自由に仕事もできません。そこで、父親の束縛をふり切るようにカナダへと海外留学をし、職場は辞めてしまいました。帰ってきてから今の職場に就職して、3年目くらいに家を買って独り暮らしを始めたのです。住宅購入までは、休日の外出が禁止され、家と会社の往復の日々。仕事と嘘をついて出かけていたとはいえ、窮屈でしたね」

――うーむ。上司に電話をかけてこられるのは困りますよね。家を買ってからは、状況は変わりましたか。

富樫「仕事に没頭できるようになりましたね。それは本当に嬉しいことで、その頃がむしゃらに働いたことが、今の自分の礎(いしずえ)になっています」

勢いで、なんとかなった

――それで、12年後に買い替えたと。

富樫「約28㎡で狭すぎたので。売値は元値よりも1,000万円ほど安かったですね。それも時代の変化なので仕方がないと思いますが。逆に、2軒目の購入物件は、すでに売値の相場は買値を上まわっています。現在は私が住んでいますが、ここも2020年のオリンピックまでには売ろうと思っているんです」

――物件選びのポイントは何でしょう。

富樫「新築であることと、職場に近いこと、そして小さな駅の最寄りにあることですね。中古に偏見はないのですが、よい物件を探すのに手間がかかるのが嫌なんです。あとは歩くのが嫌いなので、職場に近く、駅の構内を歩きまわらなくてもよい小さな駅が条件です」

――徹底した合理主義。いろいろなことを効率化されて仕事一筋に来られたんですね。ご結婚を考えたことは、なかったのでしょうか。

富樫「結婚する状況になったときには、プランを再考すればよいと思っているので、思い悩むことはありませんでした。起こってもいない可能性を考えるよりも、その時々の状況にあわせたベストな選択をすることが、効率もよいと思いますよ。幸い私には没頭できる仕事がありましたし、時代はバブルの余波で給料もどんどん上がっていきました。今の若い人とは少し感覚が違うかもしれませんね。あの頃は『えい、やっちゃえ!』という勢いでなんとかなっていたものですから」

――確かに今の時代は、先を考えると雇用の不安があって踏み切れない部分があると思います。

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