学校の保健室は子どもの困っていること、苦しみをキャッチできる場/『ルポ 保健室』著者インタビュー

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ーーいい加減? そのほうが生徒からしたら話しやすいんでしょうか。

秋山「はい。養護教諭の1日は実に多忙で、熱心な方だと時代とともに変わりゆく子どもたちの問題を取りこぼさないために、研修会や勉強会に参加してアップデートを怠りません。だけど、どんなに忙しくて余裕がなくても、それを子どもに見せないようにしているんです。先生に隙があるから子どもたちは『雑談していいのかな』と思うし、その雑談のなかで彼らが抱える問題につながるようなことをポロッとこぼすこともあります」

ーー雑談といえば本書には、子どもたちが雑談しやすよう丸テーブルを置いている保健室が紹介されていましたね。

秋山「悩みを打ち明けるには、ある程度それを自分のなかで言語化する必要がありますが、それがまだできない子も多くて、代わりに『先生、だる~い』『お腹痛~い』と別の不調を訴えてサインを送るケースがよくあります。また何気ない会話に家族や交友関係についての悩みにつながるヒントもあるので、養護教諭はそこから言葉にならない苦しみをキャッチするんです」

ーー最近では生徒たちの悩みや心の問題を解消するための存在として、スクールカウンセラーがいますが、子どもたちにとってはそれと養護教諭は別の存在なのでしょうか?

秋山「問題によってはスクールカウンセラーや、あるいは外部の精神科の医師や、児童相談所の職員などにつながったほうがいい問題もありますが、自分のなかで言語化できていない問題を顔なじみでない大人に話すのはとてもむずかしいことです。だからまずは養護教諭がキャッチし、『そういうことなら専門家のこんな人が協力してくれそうだから、ちょっと相談してみる?』と子どもに促して、バトンタッチをする……そうしたコーディネーターとしての役割が、いまの養護教諭には期待されています」

たくさんの手で、子どもを支える

ーーそれぞれの専門家とつながっていることは、生徒にとってプラスになることはいうまでもありませんが、養護教諭にとってもプラスになりますね。もとより、数百人の生徒の問題をたったひとりだけで抱えることはできませんから。

秋山「本書でも紹介したように、チームを作って学校の内外でいろんな大人がその子どもを見ている、気にかけている体制を構築している先生もいらっしゃいます。いろんな大人と関わることは、いまの子どもたちにとって特に大事ですね。近年、家庭に期待できない子が増えていて、その子たちは『大人ってなったら楽しそう』『希望ある未来が待っている』とは思えないんです。大人になんかなったらしんどそうと考えていたり、将来について何もイメージできなかったり。そんな子どもたちに少しでも多くの大人が関わることで、『いろんな大人がいるんだな』『大人って悪いものじゃないのかもな』と希望が生まれるのではないでしょうか」

ーー生徒の現在だけでなく将来にも深く関わる養護教諭ですが、一方で、学校という限られた時間と空間のなかでの関わりになるので、限界もあるのではないでしょうか? たとえば生理痛の重い子に養護教諭が『子宮内膜症の可能性もあるから、病院で診てもらったら?』といっても、中高生であれば親がそれを問題と感じなければ病院にはいけません。

秋山「限界がないわけではないと思いますが、“子どもの健康を見守る大人が、親だけじゃない”という状況こそが大事です。少なくともアドバイスはできますし、親の判断ですぐに病院には行けなくても、その子のなかで自分はその可能性があると認識が残っていれば、いずれどこかで病院に行くなり、自分で調べるなりといった行動につながる可能性はあります」

ーー在学中しかその子を見守ることはできませんが、その限られた時間のなかでその子の後々の人生にまで影響を与えられるアプローチがあるのですね。

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