キラキラすることを求められた職場
もうひとつ「女子力」について考えたのが先日、セクハラだとの指摘を受けてオンエア中止となった資生堂「インテグレート」のCMです(「アラサーは楽しい!資生堂インテグレート「25歳以上の女は…」のネガティブ」)。
一連のCMでは、25歳の誕生日を迎えた女性が友人から「今日からあんたは女の子じゃない」「かわいいをアップデートできる女になるか、このままステイか」と言われたり、男性上司に「がんばってるねぇ」と言われ「ありがとうございます」と答えたら「それが顔に出ているうちは、プロじゃない」と言われたりと、セクハラ、パワハラ、エイジハラスメントのオンパレードとなっています。
このCMで演出されているのは、20代後半の女性がセクハラ、パワハラ、エイジハラスメントが日常的に横行する生活・労働環境に置かれているという状況です。資生堂の意図としては「こういう状況で戦わなければならない若い女性に、化粧品がお手伝いできることを伝えたい」というものだったのでしょうが、結果として、現代日本女性が置かれている劣悪な生活・労働環境を再現し、あたかもそれを肯定しているかのような作りになってしまいました。
私はこのCMを見て、私自身が「若い女子社員」として働いていた20代当時のことを思い出しました。私は大学院を卒業して勤め始めたので、25歳で新入社員になりました。最初に入ったのはIT系の小さい会社で、システムエンジニアとして採用されたのですが、最初の研修で「女性はやはりハイヒール」「女性はお化粧をしているのがマナー」などと言われ、とてつもない違和感を感じていました。その後、上司と合わず、無駄な残業ばかりさせられている状況も許し難かったので、2カ月も経たずに喧嘩別れのように会社を辞めてしまいました。
次に入ったのはコンサルティングの会社でした。ここは労働環境も良く、上司や先輩も私の成長を応援してくれる働きがいのある会社でした。しかし、それゆえに女性上司や先輩たちが親切心で「女性は女性らしさを身につけないと長く働く上で不利だ」「女性は細やかさや丁寧さを求められるから、それをできるようになった方が良い」「おじさんとの付き合いが大事」という指摘やアドバイスをたくさんくれました。化粧が面倒臭くてすっぴんで会社に行ったら「今日はすっぴんなんだね」と指摘され、やはりすっぴんはよろしくないのだなと悟ったりもしました。
彼女達はみないわゆる「キラキラ女子」でした。
頭も良く、仕事もできて、おじさん転がしで、気が利いて、周りの人に好かれて、身なりも美しいキラキラ女子。
それだけ全てを兼ね備えていれば、どんな会社でもどんな労働環境でも耐え抜けるし、周りも助けてくれることでしょう。
私自身も「若くてかわいい女の子」として、笑顔を振りまきながらなんでも一生懸命にやることで、ミスをしても周りにカバーしてもらえました。その一方でどんなに頑張っても、同時期入社の男性社員より「甘ちゃん」扱いを受けたり、頑張って取ってきた仕事も「君ではまだ回せないよ」と先輩に振り分けられてしまうという状況に、だんだんと嫌気がさしてきました。私は、どんな嫌なことがあってもニコニコしていられるキラキラ女子にはなれないし、そんなものになりたくもないと思ったのです。
そして、日本の会社員生活とおさらばしてアメリカへと旅立ちました。