永遠に付きまとう「非モテ」感に、男たちはどう向き合えばいいのか。/杉田俊介×荒井裕樹

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10月14日に『非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か』(集英社新書)が上梓された。著者の杉田俊介さんは、messyで行われたライター・西森路代さんとの対談で「マッチョにはならず、被害者意識にも染まらず、女性や性的マイノリティの人たちに対する暴力を意識して、なおかつ、『男』としておだやかな気持ちで生きられたらいい」と語っていたが、本書はまさにそうした新しい「男らしさ」を模索する一冊となっている。

「男の弱さは、自らの弱さを認められない弱さ」であり、それを語る言葉が足りていないと語る杉田さん。「男は生きづらい」本が多数出版される中で、杉田さんの実存に迫った試行錯誤は、それらと一線を画すものとなっている。男たちはいかに「男らしさ」を語ればよいのか、『障害と文学』(現代書館)、『生きていく絵』(亜紀書房)などで、障害や生きづらさを抱える人びとの表現活動を追い続けてきた荒井裕樹さんとの対談をお送りする。【全三回】

「男らしさ」を肯定する試行錯誤

荒井 最初にこの対談企画を依頼されたときに、果たして僕で務まるだろうかと正直不安になりました。僕は「品格」という言葉を、ある程度余裕がある者の余裕がある振る舞いというイメージで捉えていたんですね。だからタイトルの『非モテの品格』をみて心配になったんです。ただ読み始めてみたら、「品格」という言葉のイメージからは程遠い、必死さと切実さをひしひしと感じて、これなら僕にもお伺い出来ることがあるんじゃないかと思いました。

杉田 当初はサブタイトルの「男にとって「弱さ」とは何か」をメインタイトルとして提案していましたが、広く届けるためには「非モテの品格」のほうがいいのではないか、ということになりました。「品格」というとき、赤瀬川源平さんの『老人力』(ちくま文庫)をイメージしてしました。『老人力』は、その他の『○○力』と冠された「○○出来ることはいいことだ」という能力主義的な本と違って、「老人力が高まったから今日は腰が痛くて動けない」みたいな、ユーモラスなもので、そういうアイロニーとユーモアがじんわりにじみ出ればいいな、という気持ちもこのタイトルには込めたつもりなのですが。

荒井 ユーモアというには文体が切実ですよね。

杉田 そうかもしれないですね。僕は過度に生真面目になりやすいところがあるので。ユーモアのある人間になるのは、なかなか難しいですね。

荒井 「男の弱さというのは、自らの弱さを認められない弱さなのだ」と書かれています。この本はまさにその葛藤の産物だと思いました。男が「男の弱さ」を語ると、上から目線の無自覚な偽善になったり、フェミニズムへのバックラッシュになったり、「女も大変かもしれないけど、男だって大変なんだよ」という浅薄な重さ比べになったり、あるいは自己嫌悪に陥ってしまうことがある。それだけ男が素直に「男の弱さ」を語る言葉がいままでなかったのか、と驚きました。

杉田 僕は常日頃からいつでも自己嫌悪に陥っているような人間でして……いわゆるマジョリティのマッチョな「男らしさ」を否定したり、嫌悪したりしながら、それでもなんとか自分の性を肯定出来るようになれないか、そういう試行錯誤の記録にはなっているかもしれません。

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