ツリマユ・たらこ唇・いじめられっ子のヒロインが幅広い女子の共感を呼んだ普遍的作品/『ご近所物語』

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彼氏への依存がリアル

 大人になった今の私は、「たった1年半の留学生活なんてあっという間だし、行くなら行ける時に行っちゃいなよ! 学費だって出してもらえるんだよ?」と、実果子の悩みを一蹴するだろう。でも10代の頃の自分を振り返れば、あの頃、1年半後をちゃんと想像するのは難しかった。また、その時の恋愛が、その時の私の恋愛以外の生活(バイト、交友関係、ファッション、ものの見方など)を左右している面があったことは否定できない。

 実果子は思い悩むあまりツトムに「行くなって言って」と訴える。ツトムの強い一言さえあればあたしの悩みなんてふっとぶのに、とかなり依存的。自分のことなんだから自分で決める。そんな当たり前のことですらできない、考えたくない、不安ばかりが募る、どっちも選べない、人に意見を聞いてもしっくりこなくてモヤモヤする。そんな経験は私も10代の頃にあるし、恋愛は多かれ少なかれ人を臆病にさせるものだから、実果子の心情描写はかなりリアルに感じるし、今読み返しても胸が締め付けられる。私も昔の恋愛で、相手からイラッとした表情で「どうしたいんだよ!?」と聞かれて、ものすごく腹が立ったことがある(はぁ? 自分がどうしたいんだかわかんないから悩んでんじゃん!なんでそんなこと聞くの? こっちがイラッとするんだけど~!と、当時は思っていた)。心がささくれてきて、「~ければよかった! ~だったら。~と言ってくれれば」と現状を否定的に捉えたり、相手に自分を誘導してほしいと願ったり。負のループである。

 バディ子が実果子に助言したように、そんなの相手にしたら重い。ましてやツトムも実果子と同じ17歳なんだから。幸い実果子とツトムには17年の蓄積があり、相手を他の異性と入れ替えることは不可能なほど関係性が確立されており、相手を思う気持ちのベクトルも同じくらいに強かった。だから最終的にツトムは実果子に「(ロンドンに)行け」と言い、実果子も自分の未来を見つめ留学を決心する。実果子はロンドンに旅立ち、ツトムはカメラマンの道を選び、他のアキンドメンバーたちもそれぞれの道を歩みはじめたところで物語は終わる。

 すっきりした最終回ではあるものの、彼らの未来が気になって仕方なかった私は、数カ月後の「りぼんティーンズ増刊号」に掲載された『ご近所物語 復活編』はうれしかった。さらに、祥伝社「zipper」1999年5月号より連載が開始した『Paradise kiss(パラキス)』はヤザガクが舞台で、実果子の妹(実和子)やリサの息子がメインキャラクターとして登場。時折大人になった実果子たちも登場して、紫(パラキスの主人公)や実和子らに的確なアドバイスを与える。2016年現在、『ご近所』の連載終了からは19年、『パラキス』の連載終了からも13年が経過していることに驚かされるが、今読んでも、あるいはさらに10年後、20年後に読んでも、矢沢あいの作品には魅せられてしまうだろう。『パラキス』に法司(のりじ)は登場していなかったけど、健在なのかしら?(笑)

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