マンション購入の理由は、母の「結婚しろ攻撃」から逃れるため。母と離れ、自分の人生が見えてきた

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――それで「結婚しろ」と……。

秋元「父が亡くなってから最初の2、3年は嵐が去った後の静けさというか、母娘ふたり、よい時間を過ごしたんです。ところが次第に、母が私の結婚に執着するようになって。母にとっては、自分と同じ道を娘が歩むことで、自らの生き方が肯定された気がするのでしょうね。でも私は、その思いを受け止めきれません。ずっと父が闘病して家のなかがピリピリしていたので、自分が結婚したいのかどうかさえも、分からないんです。それで、いったん母とは離れた方がいいと思いました」

ーーいちど賃貸でひとり暮らしされていますよね。実家を離れるためであれば賃貸でもよいわけで、住宅を購入されたのはなぜでしょうか。

秋元「もしも結婚しなかった場合を考えると、将来的に自分のものになる居場所が欲しかったのです。自分に自分自身の面倒が見られる、ひとりでも安定した生活ができることを、母親に対して証明したかった気持ちもあったと思います。それに買った方が同じお金で広い部屋に住めるという利点もありました。実際、月々のローンは賃貸のときの家賃よりも2万円ほど少なく、広い部屋に住めています」

ーー物件はどうやって決めたんですか。

秋元「最初は普通にネットで家探しをしていたのですが、ネット経由で連絡してくる仲介業者の押しが強すぎて。押し切られる前に頭を冷やそうと、独立系の不動産会社のセミナーに行ってみました。そこで学んだことで目からウロコが落ちて、購入もそこのお世話になることにしたんです。その不動産会社は、売り主から直接物件を仕入れて仲介している場合は、買い主の手数料がゼロ。売り主との間に他社の仲介が入っている場合でも、買い主からの手数料は通常の半額に押さえられています。それでも何の問題もなく購入できました」

いまの「手数料事情」を知っておこう

 不動産仲介業者は今、手数料の値引きが盛んに行われています。仲介業者の手数料は、一般的に物件の価格の3%。しかも、不動産売り主と買い主ともに同じ会社で取引している場合は、双方から3%ずつ手数料を取っているので、儲けは2倍になるのです。こういった双方から手数料を取る取引は、不動産業界では「両手仲介」といいます。

 両手仲介は日本では違法ではありませんが、実はアメリカなどの海外では法律で禁止されています。なぜなら、両手仲介の場合は、買い主も自社で探した方が利益があがるために、安値で売ってしまったり、他社に売られないように情報を隠したりするなど、売り主にとってデメリットになることがあるからだそう。

 しかし日本では一般的な方法ですし、両手仲介を行っている業者だから悪質というわけではありません。それなりの手数料を取っているからこそ、手厚いサービスを提供している業者もあるでしょう。ただし、買い主・売り主のどちらか一方からしか手数料を取らない「片手仲介」の方法で買い主の手数料をゼロにしたり、そもそもの基準と言われていた3%の手数料を値引きしたりする仲介業者も出てきたことは、知っておいた方がよいことです。

ーー手数料を節約しつつ、スムーズに購入できたのはよかったですね。結果的に、現在のお家には満足されているのでしょうか。

秋元「職場に近いこと。そして、私はお酒を飲むのが好きなので、飲屋街にほど近いことが条件でした。今の住まいは、そのどちらも満たしているので満足していますね。それに、両親がもともと不仲だったり、父の死後は母が私に執着したりしたせいで、実家にいたころは心が休まる暇がなかったんです。物音がすれば、『何かあったんじゃないか』と恐怖を感じていました。でも今は物音があっても、それは近所の人の生活音以上でも以下でもない。私を脅かすものがない環境を手に入れられて、とても幸せです」

――築40年の物件ということですが、そのことは気になりませんでしたか。

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