集団強姦疑惑を警察に委ねる慶應大学は、自ら謳う「自分の頭で考える力」を放棄している

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武田砂鉄

武田砂鉄/論男時評(月刊更新)

 本サイトを読まれる方が日頃手にすることがないであろうオヤジ雑誌群、その時々の記事から引っ張り出して定点観測していく本連載。今回は、「ミス慶応コンテンスト」を主催する慶応大学の公認学生団体「広告学研究会」の集団強姦疑惑についての記事から考察していく。

「1人に手を押さえつけられて、2人に暴行されました。写真や動画も撮られていました」

被害者女性の証言(『週刊文春』2016年10月20日号/『「ミス慶應」中止 1年女子「集団強姦」被害届提出』)

 10月13日発売の『週刊文春』『週刊新潮』が慶應大学の公認学生団体「広告学研究会」の集団強姦疑惑について報じると、その日の朝日新聞夕刊では、「週刊誌報道を受けて」とすら書かずに「慶応大の男子学生数人が、慶大の10代の女子学生に集団で性的暴行を加えた疑いがあるとして、神奈川県警が捜査していることが捜査関係者への取材で分かった」と書いた後、慶大広報室からのコメント「性的暴行などの事件性は確認できなかった」を紹介し、「団体の解散で、『ミス慶応コンテスト』は今年、中止される」と記事を締めくくっている。

 週刊誌のスクープを受けて新聞が急いで記事にするケースは頻繁にあるけれど、あたかもその事実を前から知っていたかのように週刊誌記事の存在をスルーする事例が散見される。今回、被害に遭った女性が「1人に手を押さえつけられて、2人に暴行されました。写真や動画も撮られていました」(『週刊文春』10月20日号)と証言し、小便までかけられていたとされる愚行を前にして、淡々と警察発表+大学発表を書くだけに留まっているのはいかがなものか。

 大学は、9月2日に合宿施設で「広告学研究会」に所属する複数の未成年の学生に飲酒させていた事実を把握し、10月4日に告示文を出し団体に解散を命じている。週刊誌が発売となる前日に慶應大学は、告示文とは別途のリリース文をホームページに発表している(「広告学研究会」の解散命令に関わる一部報道について)。強姦があったとは確認できなかった、とする文面だ。

 「告示文に明記した解散事由以外にも違法な行為があった、と一部報道がなされております。今回の解散処分にあたっては、複数回にわたり関係者に事情聴取を行う等、大学として可能な限りの調査を行いましたが、報道されているような事件性を確認するには至りませんでした」とし、「もとより、捜査権限を有しない大学の調査には一定の限界があります」と言い訳をする。「捜査権限のある警察等において解明されるべきであると考え」ており、「一部報道されているような情報の『隠蔽』の意図も事実もありません」という。こっちとしてはやれることはやったんです、頑張って調査したけど集団強姦は確認できなかったんです、と締めくくったのである。

 本当だろうか。集団強姦があった事実を把握しているか、と投げた『週刊文春』の取材に対して、当初、大学の広報部は「お答えしかねます」と文書で返答するのみだった。しかし記者が清家篤塾長を自宅で直撃し「明日広報から聞いて、私の方から答える必要があればアレですが、そうでなければ広報がお答えする」との言葉を得ると、翌日から広報の対応が切り替わり、先に引用したリリースにある、複数回調査を行ったがその事実は確認できない、という発表を繰り返すようになったのだ。

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