社会

ジェンダーギャップ指数ランキングに一喜一憂すべきではない理由

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2015年と2016年の比較に加えて3年ごとに繰り下げて2006年(この報告書が初めて発表された年)、2009年、2012年も加えて比較してみます。

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これを見ていてわかることはまず、日本の各項目のスコアはそんなに変化していないということ、さらに言うならスコアそのものはむしろ少しずつ上昇しているということです。少しずつ点数が改善しているにも関わらずスコアが下がりつつある要因には、その変化のスピードがほかの国と比べてはるかに遅いということがあるでしょう。

また、参加国が増えたことも関係があります。たとえば2006年は115カ国が参加していますが、2015年には145カ国と30カ国も増えています。2006年には参加していなかった国のうち、2009年時点で日本より順位が高い国は20カ国弱あります。それらはキューバ、モザンビーク、ブルンジ、バルバドス、セルビア、ベトナム、セネガルなど新興国が多く、経済成長目覚ましい地域でありながらも一般的には、貧しく、非民主的で、男女不平等なイメージさえ持たれがちな国々です。しかし、実際には日本よりもはるかにスコアが良いのです。

この指数は「ジェンダーギャップ」を示したものなので男女の違いが小さい国ほどランキングが高くなります。例えば教育達成を例にあげると、男性は大学院卒で、女性は大卒が当たり前の国よりも、男女とも中卒が当たり前という、男女間で差がない国の順位の方が高くなります。そういう意味では、このランキングで多少順位が落ちようが上がろうが、そこまで一喜一憂する必要はありません。

しかし、こうした新興国やほかの先進諸国よりも日本がぐっと順位が低いのが、経済活動への参加・機会と政治的地位という項目での男女格差です。経済活動への参加・機会に関してはむしろ点数も落ちており、男女格差が広がっているとも考えられます。

むしろ女性差別を助長している?

こういうレポートが出ると、しばしば「そもそも男女平等の基準がおかしい」「欧米の基準に日本をあてはめるな」といった批判が出てきます。こうした批判は「欧米と比較されたくない」「男女平等という考え方そのものが欧米的」といった感情によるものではないかと思います。

確かにこの指数算出のために使われている項目は日本の状況どころか、欧米であれほかの地域であれ、ジェンダーギャップを本質的に説明できるようなものでは到底ありません。たとえば、このレポートでは経済活動の項目で、女性の労働参加率や男女の賃金格差といったものが重要視されていますが、日本の場合は女性の労働参加率は他国と比べても決して低くありません。本質的な問題はそれが出口のない非正規雇用、下船できない「蟹工船」ですが、そのことをこのレポートから読み取るのは難しいでしょう。

項目の中には女性専門技術職の比率が入っているので、それがかろうじてパートや派遣といった「非専門的」職業へと日本の女性の多くが追いやられている状況を説明しうる項目ではあります。しかし、そもそも「専門技術職」「非専門職」といって仕事を差別化する発想は、日本企業の多くが「総合職」「一般職」といった分け方や「正社員」「非正社員」といった雇用差別をしている状況と根本的には同じです。

より専門性が求められる仕事、特殊な訓練や知識を必要とする仕事は少なくありませんが、入口のところで「非専門職」「一般職」「非正規」とされること、でそうした専門的な仕事をするための訓練の機会もはく奪され、キャリアアップの機会さえ与えられていない女性たちの状況をこのレポートでは全く説明できません。それどころか、この指数はそうした「専門性」という言葉による女性差別を助長しているとさえ言えます。

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