社会

ジェンダーギャップ指数ランキングに一喜一憂すべきではない理由

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ケアは誰にでもできる仕事じゃない

何より、この指数には家庭に関する項目が一切ありません。家庭で誰がどの程度の家事・育児を負担しているのか、また家計に関する影響力や家庭内で誰が権力を持っているのかといったものは一切考慮されていません。また、幸福度や生活に対する満足度といったものも全く入っていません。

レポートの中では家庭内労働(アンペイドワーク)と家庭外労働(ペイドワーク)や子育てに関する費用の話も出ていますが、前提としては「女性が担っている家庭内労働を外注すれば女性専門職が増える」という論調です。確かに女性専門職が男性専門職に比べて少ないことは国際的にも大きな問題となっています。しかし、家事や子育てというのは外注して「専門性がない女性」にやらせれば済むような問題なのでしょうか。

家庭の経済力を考慮しても、無職の主婦の方がパートをしている主婦よりも幸福度が高いという研究もあります。また、主婦の家庭管理能力が夫・子の幸福度に相関があるという研究もあります。専業主婦がいて家庭内の家事や育児を全面的に担いつつ精神的なケアも提供することで夫が外で精力的に経済活動を行い、子も教育や成長においてより充実した生活ができるのであれば、家庭で働く主婦という職業を経済活動から疎外されていると単純視することがジェンダーギャップを適切に説明できるものでないことは明らかです。

こうしたケア(家事・育児・介護)の仕事を外注するという発想には「教育を受けて高い給料をもらっている専門職の女性はそのまま外で働いて、誰にでもできるケアについては安上がりに外注すればよい」という考えがあります。しかし、本当に誰にでもできる簡単なものなのでしょうか?

「誰にでもできる」と思われている専業主婦やその外注を請け負っているメイドやベビーシッター、保育士や介護士が担っている労働は、訓練や専門性、知識を必要とする労働です。赤ん坊がなぜ泣いているのか、なぜ熱を出しているのか、どうすれば寝たきりの老人をスムーズに起き上がらせることができるのか、限られた予算で食費や教育費をやり繰りするにはどうすればよいのか、そういった知恵といったものは、やってみなければわからない、自ら体を動かし日々工夫することで習熟する、いわば熟練工のような仕事です。

結論としていうならば、一見すると男女不平等を解消し女性の社会進出を応援しようというジェンダーギャップレポートは、実際には主婦であれメイドであれ「ケア」を一手に担うのは常に女性であり、「ケアを誰に外注するのか、どれくらいコストがかかるのか」に悩むのも「ケアという仕事の『専門性』を認知されず、軽視される」のも、そのほとんどが女性であるという本質的なジェンダーギャップの問題を覆い隠しているだけです。外で働くことだけが経済活動ではないし、経済や政治といった「外の世界」だけが専門性や社会的に重要な仕事ではありません。「ケア」はこの社会を維持し、次世代へと受け継いでいくために必要不可欠な仕事であり、「誰にでもできて、誰でもできてあたりまえ」なものではないというところから認識を改めるべきです。

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