
Photo by Daniel Huizinga from Flickr
アメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が勝ちました。下馬評ではヒラリー・クリントン氏優勢と言われていましたが、それを大きく覆しての勝利です。
日本でも知られているように、トランプ氏は女性、有色人種、移民、LGBTに対する差別を堂々と口にし、白人労働者階級、特に男性を代弁していると言われていました。彼らが抱える不満は大きく3点です。
まず、アメリカへの移民(ラテンアメリカからの移民)の流入や、NAFTAなどの自由貿易協定を中心とするグローバリゼーションの進展によりアメリカから仕事が国外へ流出しているという反感。次に「毎日頑張って生活している」自分たちから搾り取られていく税金で、自分たちよりも「努力していない」貧困層にばかり政府がお金をばらまいているという不公平感。そして、景気が良くなって潤うのは富裕層ばかりで自分たちには一切恩恵が無く生活は日々苦しくなっているという経済格差への不満。
こうした不満は白人労働者階級の人々だけではなく、中間層や人種的マイノリティ、移民、女性やLGBTの人々にも共有されているものです。実際、トランプ氏が差別の矛先を向けていた女性やマイノリティも少なくない数の人々が、トランプ氏に票を入れました。特に白人女性の半数以上はトランプ氏に票を入れましたが、これは他の人種的マイノリティの女性が圧倒的にクリントン氏に投票したのとは大きな違いです。
今回の選挙の投票行動は、人種・性別・収入・教育レベル・宗教といった属性で割れました。CNNの出口調査によると、白人男性の63%、白人女性の53%がトランプ氏に入れたのに対して、黒人男女の80%以上、ラティーノ男女の60%以上がクリントン氏に入れています。
一方、人種的マイノリティ全体で、黒人の8%、ラティーノの29%、アジア人の29%、その他の人種的マイノリティの37%がトランプ氏に投票しました。また、移民1世は31%がトランプ氏に投票しました。この数は決して少ないとはいえません。移民1世を多く含むラティーノの3割が、「移民が仕事を奪っている」と自分たちを悪役に仕立て上げるトランプ氏に票を投じたのです。現状の政治や社会に大きな不満や不安を抱え、大統領候補が差別主義者かどうかよりも、「明日の生活」をなんとかしてくれるかもしれないという期待をトランプ氏に込めたのではないでしょうか。