社会

「普通」の人々の怒り 大統領選がみせたアメリカの分断は他人事ではない

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地方の白人労働者たちが見ている「潤っている移民やマイノリティ」は一部の都市部のケースであって、地方に住むマイノリティが安定した生活を獲得しているわけではありません。しかし、メディアなどを通じて拡がっている都市部の女性、移民、マイノリティの活躍のイメージが自分たちの現状とあまりにも乖離していることを「自分たちが逆差別されているからだ」「移民が自分たちの仕事を奪っているのだ」と彼らは捉えます。そして、トランプ氏は移民やマイノリティ、女性を白人労働者・中間層の鬱憤の矛先として選挙運動を展開しました。

しかし「奪われる」側が常に地方在住の白人男性労働者というわけではありません。グローバリゼーションで潤っている都市部でも、性別や人種や国籍による差別を禁止するダイバーシティーの進展によって、たとえば移民の男性がアメリカ人女性の仕事を奪うケースもありますし、黒人男性に白人女性が仕事を奪われることもあります。「奪われる」側である人たちは、不当な差別により構造的に社会進出や能力を試す機会から遠ざけられていた人々により多くの機会を与えるアファーマティブアクションの取り組みに過敏に反応し、逆差別だと考えるのです。

トランプ氏の当選を受けて、ニューヨークやカリフォルニアなど、アメリカ各地で若者・マイノリティを中心に反対デモが起こっています。一部、暴徒化しているというニュースも入ってきています。「逆差別だ」と白人労働者・中間層が訴えれば、差別されているマイノリティの労働者・中間層そして貧困層が、こうした怒りを示すのも当然のことです。階級と人種、都市部と地方、こうした軸でアメリカが分断されている状態は、日本にとっても、他の先進国にとっても他人ごとではありません。

日本でも進められている「女性活躍」や一定の割合の女性管理職を求める政策は一種のアファーマティブアクション(差別是正政策)ですが、現状では入り口の機会を与えようという動きでさえ「逆差別」と批判されています。「差別されている」「奪われている」と感じている男性側に鬱憤が溜まり続ければ、政治的・社会的に日本が大きく後退するようなことにもなりかねません。それに伴って「逆差別」という批判が強まれば、差別されている側の怒りはさらに大きくなるでしょう。東京と地方の格差も、もはや修正不可能なまでに拡がっています。社会の分断は日本でもすでに始まっています。私たちはアメリカ大統領選挙の結果に驚くだけではなく、そこから学び、手遅れになる前に日本の政治を変えていく必要があります。

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