社会

トランプ大統領その後~吹き荒れるヘイトクライムに、私たちは「No!」を突き付ける

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 ルーラル地区には昔からKKK(クー・クラックス・クラン)と呼ばれる白人至上主義団体が散在する。150年前の奴隷制度終焉の直後に自然発生したもので、自由人となった黒人をリンチ、殺害するなど苛烈な虐待――最悪のヘイトクライムを行ったことで知られる。一時期は猛威を振るったKKKも時代と共に沈静化したが、米国史上初の黒人大統領が誕生した後は再度、数が増えつつあった。このKKKが今回の選挙ではトランプを公式に支持し、トランプが勝利した今、南部のノースカロライナ州で12月に当選祝賀パレードを行うと告知している。

 こうしたルーラルでのトランプ支持をメディアが完全に見落としていたことはトランプ勝利直後に報道されたが、さらに見逃していたのが経済的にも社会地位的にも恵まれたサバーブのトランプ支持者の存在だった。この層はヒラリー支持の都市部インテリ層・リベラル層とも交流があり、ルーラルのトランプ支持者のようにはっきりとした支持行動を見せなかった。とは言え、トランプ支持は単に都市部/サバーブ/ルーラルだけで読み解けるものではない。都市部にも少数とはいえ、トランプ支持者はいた。

 そもそもアメリカは人種、民族、国籍、言語、宗教、性的指向、学歴、職業、経済力など人々のバックグラウンドは多岐にわたる。個々人はそれら複数の要素の組み合せだ。多くの場合、人は自分と同じか、似た背景を持つ人々とコミュニティを形成し、暮らす。各コミュニティ間の交流は少なく、相互理解もない。それぞれが自分たちの生活と将来を良くしてくれるであろう政治家を支持するが、アメリカは二大政党制であるため、様々なグループがあっても針は両極端に振れる。

 その針が完全に振り切れてしまったのが今回の大統領選だった。今は目に見える形のヘイトクライムが先行しているが、今後はたとえば雇用差別など目に見えにくい差別も今以上に広がる可能性がある。

Do It Yourself

 悲観的なニュースばかりでもない。かすかな希望もある。

 アメリカにはDIY(Do It Yourself – 自分でやれ)の精神がある。アンチ・トランプ・デモは今も連日続いている。デモ自体に大統領を弾劾する法的効力はないが、アンチ・トランプ派の大きな意思表示だ。

 さらに来年1月20日にワシントンD.C.で行われる新大統領の就任式翌日に、“ウーメンズ・マーチ・イン・ワシントン”と称された大々的なアンチ・トランプのデモ行進が予定されている。女性が主ではあるが、女性だけでなく、人種的マイノリティ、移民、LGBTQ、障害者、全宗教の信者、そして男性も含め、すべての人の参加を大歓迎としている。

 ドナルド・トランプが勝利した瞬間に混沌の世界となったアメリカ。この先アメリカが何処へ行くのか、今は誰にも予測出来ない。しかし、アメリカは建国以前から常に分断および差別と闘い続けてきた国であり、奴隷制の開始から400年目にして黒人大統領を抱くまでになった。今はその激しい揺り戻しに襲われているのだ。アメリカはやがて本来のアメリカを取り戻すと信じたい。
(堂本かおる)

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