「グリーン席で騒ぐ母子は生きている必要はない」…大作家の蔑視発言を放置してはならない

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イイ女は、君の頭髪のことなど気にしないよ。バカな尻軽女だけが、大人の男の頭髪を気にするんだよ。脳ミソもないくせに。

伊集院静(伊集院静の「悩むが花」/『週刊文春』2016年11月10日号)

 同じ号には、抜け毛が気になる「30歳・男・会社員」から、ハゲる前に結婚したいという相談が寄せられており、その彼に対して上記のように励ましているのだが、なんかもう、「そういう言葉遣いしちゃいけませんよ」と年少者に向けるような注意を差し出すしかなくなる。「イイ女」という言い方がそもそも不快だが、その言い方をひとまず受け止めるとして、その「イイ女」は、他の女性に対して「バカな尻軽女」だなんて広言する男から真っ先に遠ざかっていくと思う。「脳ミソもないくせに」は、脳ミソが充実している人が使う言葉ではない。

 今回、担当編集者から、この発言についての考えを聞かせてくれませんかと言われていたのは、一橋大学のミスコン運営団体「C&A」の発言だった。今年から復活するミスコンを開催する理由として、運営団体の学生が「特に地方部において、一橋の知名度を上げるためですね。ミスコンは大学の認知度を広げるのに最も手っ取り早い方法だと思います」(一橋新聞WEB)と答えている。ミスコンには批判もあるけれど、との問いには「そのためミスキャンパス一橋は容姿が一定の水準以上であれば、男性も女性もエントリーできるようにしていくつもりです。また、容姿だけではなくパフォーマンスも見てもらえるようにしようと考えています」とした。さらりと「容姿が一定の水準以上であれば」と答えてしまう鈍感さに呆れる。周回遅れの意見が若い学生から再提出されていることにうなだれる。

 周回遅れだろうが構わない、女・子供を傷つけようが、俺は言いたいことを言うんだと年長者が傍若無人を貫く。そして、いわゆる偏差値的な「脳ミソ」の詰まった若者からも、こういう意見が垂れ流される。この原稿を書いているのが、大統領選挙の結果が出た翌日なのでどうしても持ち出してしまうが、海の向こうのアメリカでは「女は本質的に美的に楽しめるオブジェクト」「ジャーナリストになるためには、女はホットでなくちゃ」「自分に金と力があるので、女たちは自分に媚びるのだ」(ハフィントン・ポストより)等々、女性蔑視発言を繰り返してきたドナルド・トランプがアメリカ合衆国の大統領に就任した。まったく「いつの時代だよ?」という女性蔑視があちこちから投じられている。答える側は「いつの時代? 今の時代だよ!」と凄んでしまう強気の話者ばかりだ。「そういう母子は生きている必要はない」「脳ミソもないくせに」を前にして、言わせておけよ、と放置するのではなく、いちいち指摘するべきだ。こんなのダメだと思う。

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