連載

ナルシシズムであってもなくても、エゴサーチは気持ち悪い/中村うさぎ×二村ヒトシ×枡野浩一【5】

【この記事のキーワード】

「僕はアナルに大きなものを求めすぎかもしれない」(二村)

二村 枡野さんはゲイビデオは観ているくせにアナルは嫌だとか、本当に僕としてはイライラするんだけど(笑)。

枡野 逆に僕はこれ(湯山玲子と二村の共著『日本人はもうセックスをしなくなるかもしれない』幻冬舎)を何度も途中で読めなくなって。お尻のことが出てくるから。“男もお尻でオーガズムを感じるべき”とか書いてあっても、「そうは言っても二村先輩~!」って思っちゃう。

二村 湯山さんとのこの本の前後に、川崎貴子さんとの対談の本(『モテと非モテの境界線 ~AV監督と女社長の恋愛相談』[注])と、岡田育さん・金田淳子さんとの鼎談の本(『オトコのカラダはキモチいい』[注])も出してるんだけど、なんか僕、女性の著者と一緒に本を作るたびに、必ず岡田斗司夫さんをディスり、「なぜ岡田斗司夫が嫌いかといえば俺の中にも岡田斗司夫がいるからだ」と懺悔し、そして最後に必ず男性読者に向けてアナルを掘られる体験を勧めるという……、伝統芸のようになっていて。

会場 (爆笑)

二村 女性(メンヘラ)論・岡田斗司夫論・アナル論、の三段論法でだいたいの本を作っているという(笑)。

枡野 でも僕は、岡田さんとかはともかく、お尻のことが出てくると急に読めなくなっちゃうから……。お尻はそんなに万人が楽しめるものなかなぁ?

二村 個人差はありますよ。でもそれは女性にも「中」でイケない人も沢山いるみたいなことで。やってみる価値はある……、や、やりたくなきゃやらなくていいか。嫌ならもちろんやらなくていい。

枡野 (電気グルーヴの)石野卓球さんがね、「鼻の中に紐を通すと鼻炎が治るっていうけど、そんなことするくらいなら一生鼻炎でいたいよ!」って。アナルって、それみたいですよ。

中村 う~ん。なるほどね。

枡野 僕、鼻に紐を通して頑張ってみたんだけど。成長しなきゃと思って。でもやっぱりダメだった。

二村 いや僕ね、男性みんながケツでヨガれば……、まぁケツじゃなくてもいいんだけどさ、もっとヨガればいいいのにって思うのは、威張ってる男性に対してのムカつきもあるんだよね。

中村 うん。

二村 僕自身も、僕の中に威張ってる男性性があるから同族嫌悪してると思うんだけど。ほんとに自民党っぽい政治家とかネトウヨとか嫌いでさ。左翼でも「リベラルは絶対に正しい!」って威張ってる馬鹿も大嫌い。右でも左でも、自分たちは正しいと思って威張ってるおっさん、ああいうのがみんなアナル掘られて快感で頭おかしくなってアヘアヘ言えば、不幸が減るんじゃないかなってさ……。でもマゾでも、威張ってるマゾもいっぱいいるからなぁ。ケツを掘られながら「俺のケツは世界一だろ!」って威張ってるマゾのベンチャー経営者とか、いっぱいいるから(笑)。そういう人は掘られても何も変わらないんだろうなと思うと、むなしくなるよね。ただ、ちょっと違う世界を見ると、いいんじゃね?……っていう。

枡野 そんなことで気持ちが切り替わるものなのかなあ?

二村 う~ん……。冷静に考えてみたら、そうじゃないかもね。僕はちょっとアナルに大きなものを求めすぎているかのもしれない。

会場 (爆笑)

枡野 でも二村さんはそれで楽しいんだからうらやましいですよ。

二村 それで掘ってる女の人も楽しんでるんだったら、そのセックスでは女性を侮辱をしなくて済むというか……。侮辱することって、普通の男性がセックスの中で無意識にやってる、最大の快感のひとつですから。どっちかに侮辱とか支配がないと、普通の人間って興奮しにくいものなんだけど、でも「侮辱はよくない! 支配はよくない!」って決めつけちゃうとポリコレになっちゃうんだけど、せめてそれをリバーシブルで楽しめないか、っていう。

枡野 だとしたら僕は、自分の中に男尊女卑な部分があるかもしれなくて。あと女嫌いなところもこれを書いて自覚したというか。自分が姉にいじめられていたこととかを、すごく根にもっているんじゃないのかと思いました。

二村 だから枡野さんはさ、それで普通に素直にゲイになればいいのに、「アナルは嫌だ!」とかつべこべ言うでしょ!?

中村 アハハハハハ! まぁ、ゲイだってね、アナル嫌いなゲイもいるから。

二村 そこはもちろんそうなんだけど、まぁ、そうだよね。オチンチンさわりあってるだけで幸せになれる人もいるもんね。

枡野 それは、そういうゲイの人がいて気が合ったら(ゲイカップルとしてその人と僕が)続いたかもしれないんだけど、わりと僕が知り合ったゲイの人はアクティブだったから。ゲイの人はゲイの人で、性的に熱心なんだなぁと思って。自分よりもよっぽど男らしいと思っちゃいましたね。

中村 だってさ、ゲイの人の「出会い系」の書き込みとかみたら、超アクティブじゃん。「おまえを孕ませてやるぜ!」って、孕まないから(笑)。ツッコミながら読んでると楽しい。

二村 いや、小悪魔っぽくノンケを誘惑する美青年は別として、淫乱なゲイの人は男らしい人も多いですよ。「そんなに射精されたらオレ、妊娠しちまうぜえ~ッ!(喜)」とか「オレのマンコに種付けしててくれえ~ッ!(嬉)」って。

中村 種付かないから! 肛門だから! みたいな(笑)。でもそういう「男女生殖幻想」みたいなのが物凄くあるのも面白いしさ。とにかく私はゲイの人は性的にめちゃくちゃアクティブだって印象はある。

枡野 そうだよねぇ~。

中村 だったら枡野さんはどうしてほしいの? アクティブじゃない接近の仕方をしてほしいわけ?

枡野 や、でもこの本を書いたおかげで、モデルにした男の人に会わなきゃならなくなって。本を渡すために。そのときはちゃんと添い寝とかしましたよ。ただ添い寝しかしなかったけど。それはでもけっこう癒されました。

中村 うん。

枡野 その人はね、両親が離婚してるの。それでお父さんに18歳のときに会いにいったら拒絶されたっていうの。その話を聞いただけで僕はグッ!ときちゃって……。それだけでグッときちゃってるから、そこから性的なものに転がることは難しかったのね、僕は。だから、もっと性的なこと以外のふれあいみたいな感じでしたけどね。

二村 う~~ん。枡野さんはさ、枡野さんがハプバー(ハプニングバー)を経営すればいいんじゃないの?

中村 覗けるしね。

二村 店のカウンターの中に居れば「おまえも参加しろよ!」みたいな圧迫感もないし。さらにEXILE兄貴的な枡野さんの性癖を知ってるお客さんがくれば、枡野さんも参加できるかもしれないし。

枡野 そこに悩んでればね。僕が「もっとしたいのに……」と悩んでれば、そうするのがいいのかもしれないけど。今はもう……。

二村 ああ、今はもういいんだ。

枡野 わかんない。流れとしてそういうことするようになったらするかもしれないけど……。今は淡々と。むしろ、みんながそういうこと勧めてくれても「う~ん」と思っちゃう。

二村 まぁ、我々セックスが好きすぎる人間は、そっち方面が先鋭化しすぎているからね(笑)。

中村 アナルとかハプバーとかね(笑)。

二村 そういうのはどうでもいいやって感じか、枡野さんは……。

【第5回の注釈】

■『すっきりソング』
本田まさゆきと植田マコトによる漫才コンビ。SMA所属。植田はベテラン漫才コンビ「笑組(えぐみ)」を師匠とし、漫才コンビ「うえはまだ」として芸歴を重ねる。本田は詩人としてNHK「詩のボクシング」全国チャンピオンとなり、ソニーから詩の朗読CDアルバムをリリースしている(推薦文はリリー・フランキー)。もともとは本田と枡野がコンビ「詩人歌人」として活動していたが伸び悩み、枡野の希望でトリオ「詩人歌人と植田マコト」となった。初単独ライブ成功後に枡野が脱退。残された本田と植田の二人が「すっきりソング」となった。M-1グランプリ2016、準々決勝進出。東京のお笑いライブシーンで人気急上昇中であり、メジャーブレイクが期待されている。

■『モテと非モテの境界線~AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)
二村ヒトシと川崎貴子の共著。川崎貴子は女性に特化した人材コンサルティング会社社長であり、婚活塾「魔女のサバト」も主催している。実際にセックス・モテ・結婚などの悩みを抱える男性たちを招き、客観的ににその悩みの根源を解剖、具体的な処方箋を提示していく、刺激的かつ画期的な相談本。

■『オトコのカラダはキモチいい』(ダ・ヴィンチBOOKS)
二村ヒトシ・岡田育・金田淳子の共著。腐女子研究家と文筆家の女性陣が痴女モノAV監督と組んで、<男のカラダは、もっともっと快感を受容して、キモチよくなれる。二次元に嫁がいる童貞も、三次元に夫がいる腐女子も、同性愛者もセックスレスも――>と提唱する本。

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■中村うさぎさん
作家・エッセイスト。1958年生まれ。雑誌ライーター・ゲームライターを経て、『ゴクドーくん漫遊記』シリーズで人気ライトノベル作家となる。その後、自らの「買い物依存症」を描きつくしたエッセイ『ショッピングの女王』でエッセイストとしても大人気となる。その後もさらに「美容整形」「ホストとの恋愛」「借金と税金」「デリヘル風俗」など自らの実経験・実体験を通じての赤裸々なエッセイを発表し続けている。2013年に100万人に1人ともいわれる難病「スティッフパーソン症候群」を発症、現在も治療を続けている。最新著作は「形見分けの書」とも表明しているエッセイ『あとは死ぬだけ』。メールマガジン『中村うさぎの死ぬまでに伝えたい話』も発行している。

■二村ヒトシ監督
AV監督。1964年生まれ。慶應義塾大学在学中より劇団『パノラマ歓喜団』を主宰する一方、AV男優としてもデビュー、多数のAVに出演する。劇団解散後はAV監督となり、女が男を攻める「痴女モノ」や美少年が女装する「女装子モノ」の第一人者といわれるなど、現在に至るまでAV業界の第一線で活躍している。男女の恋愛と自意識をテーマにした著書『すべてはモテるためである』『あなたはなぜ「愛してくれない人」を好きになるのか』がベストセラーとなり、セックスと恋愛をめぐる論客として注目を集める。さらには、男性のアナルを開発する器具『プロステート・ギア』のプロデュースも手掛けている。AVの代表作に『美しい痴女の接吻とセックス』など。最近の著作は対談や鼎談が多く、『オトコのカラダはキモチいい』(金田淳子・岡田育との共著/KADOKAWA)、『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(湯山玲子との共著/幻冬舎)、『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(川崎貴子との共著/講談社)、最新刊に『秘技伝授 男ノ作法』(田淵正浩との共著/徳間書店)などがある。

(構成:藤井良樹)

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