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嘘をつくのも嫉妬心を隠すのも、「ズル」だと思ってるの/中村うさぎ×二村ヒトシ×枡野浩一【7】

【この記事のキーワード】

「加害者は100%加害者じゃないし、被害者も100%被害者じゃない」(中村)

中村 ズルに関しては私も思うんだけど。でも私だってズルしてると思われてるかもしんないし。私ね、やっぱりこの座談会の最初に言った「解釈の問題」ってさ、すごい大事だなと思うんだけどさ。たとえば「いじめ問題」なんかでもさ、いじめられっ子が毎日毎日いじめられてると。でもいじめっ子に聞いてみると「いじめてるつもりはなかった」みたいなのはあるじゃない?

枡野 あるある。

中村 ああいうの、私、すっごくわかるんだけどさ。それは、無自覚に人を傷つけてしまうことってよくあることだから。そこはやっぱり認めないとなって思うわけ。だからさ、私のMXテレビ(『5時に夢中』コメンテーター)の降板の件もさ、(番組共演者の)美保純さん[注]が私にいじめられてるみたいなさ。私は全然いじめてるみたいな気はなかったから。だから、なに言ってんだ、みたいにさ、思ってた。最初にさ、(私が美保さんに)「AV女優のくせに」って言ったみたいにされてさ。私はそんな差別意識はないので、なに言ってんの、嘘つきねって思ったわけ。でもその後、どんどん冷静に考えたらさ、まぁ彼女にとってはそれが真実だったんだろうなと思って。嘘をついて私を陥れようとしたって最初は解釈してたけど、やっぱりそのうちに、私が言ったことを向こうがそう解釈してたんだなって。私が、「こういう役やったら面白いんじゃない」みたいに娼婦の役について彼女に話したことがあって、べつにポルノ女優だから娼婦の役をやれって言ったわけじゃなくて、女優だったらそういう娼婦の役ってやりがいがあるんじゃないかと素直に思って言った言葉だったけど、彼女は「ポルノ女優だからそういうこと言われるんだ」って解釈した。それは本当っていうかさ。

どっちが本当かっていう話でもなくてさ。私にそういう気がなかったのも本当なんだけど、むこうがそう解釈した以上、むこうにとっての真実は、「中村が悪意を持ってそういう役を薦めた、いじわるを言った」っていうふうになる。だから私も無意識のいじめっ子になってたわけよ。そのことに関してはさ、私もちょっと認めなきゃって思ってさ。それで降板の要因が「中村うさぎが美保純に暴言を吐いたから」みたいに言われたときにさ、それに対してのコメントで、暴言というのは取り方によるので、私は暴言を吐いたつもりはないけど、むこうが暴言だと思ったのであればそれはいじめと同じでさ。いじられたほうがいじめと感じたんなら、それはいじめたほうは無自覚であっても謝らないといけないと思うので。

だから一応、暴言吐いたつもりはなかったんだけど、そう受け取られたんなら申し訳なかったって言ったらさ、なんかさ、Youtubeとかで「中村うさぎは暴言を認めた!」って書かれてさ。それは認めたんじゃないんだけどっていう……。

二村 それはまた違うよね。

中村 私はフェアなつもりでそういうふうに言ったのに、それを「暴言と認めた」と書かれちゃうんだったら、なんていうかなぁ、フェアなことやって損したの私じゃんって思ったわけ。

二村 第三者が「勝ち負け」にしちゃうんだよね。

中村 そうなんだよ! だからアメリカの裁判とかのさ、「謝ったもん負け」みたいなのあるじゃん?

枡野 印象としてそうなっちゃうんですよ……。

中村 でもフェアに考えれば、なんだってさ、そうじゃん。加害者は100%加害者じゃないかもしれないし、被害者だって100%被害者じゃないかもしれない。ちょっと見方をずらせば、いじめっ子がいじめられっ子だったかもしれず……。

枡野 うさぎさんはほんとに差別意識がないから(美保純さんに)そう言ったんだと思う。つまり、本当に差別意識ある人って自分の差別意識に敏感だから。だから美保さんがかつてポルノ女優していたみたいなことには一切触れないの。そういう人のほうが差別意識が強くて、うさぎさんは差別意識がないから、そういうこと言ったのね。そういうふうにはみんな思わない?

二村 思わないね。

中村 だから、その日はスタッフ全員も凍りついたらしいのね。

二村 うさぎさんがそう言っちゃった日?

中村 そう。

枡野 それはスタッフ全員に差別意識があったからですよ。

二村 だからこそ触れないようにしていた。

中村 そして、美保さんの中にある「自己差別意識」にもスタッフは気づいていたんだろうけど、私は気づけなかったんだよね。それは私が空気読めてなかったんだと思う。

枡野 それはでも、一番そこで美保さんに対して愛情を持っていて差別意識もなかったのはうさぎさんだと、僕は思いますけど。この話を聞いて。

中村 愛情持ってたかどうかはしらないけど、普通にフラットに言っただけなんだよね。「(あなたが)こういう役やれば面白くない?」みたいに。

枡野 だからそれは……本当に差別的なことを言わない人ってどれだけ差別意識を持ってるんだろうと思いますけどね……。

中村 すぐ「それは差別だ!」って言う人もね。

枡野 そう。それはそのあなたがそう思うからだよ。昔、僕、ある文庫本の解説を頼まれて、“おかま言葉”で書いたら、(担当編集者に)「枡野さん! あなたは自分の本の解説をおかま言葉で書かれたらどう思うんですか!?」って怒られて。

二村 クククク……。

枡野 それで僕は、や、嬉しいですよ、って言ったの。でも結局ボツになったことがあるの。それはその人の中に差別意識があったからですよ、どう考えても。

中村 まぁそれはねえ、差別とかいじめとかの問題って、みんな、「差別意識はいけません、いじめはいけません」と言うことでなんかクリアになってるようにしてるけど、まったくクリアじゃないよね。関係性の解釈の違いとかさ、差別されてるほうの気持ちとかさ、差別してるつもりはないけど本当は差別してるとかさ、そう受け取られるとか、あるいは「絶対に差別してない!」って言い張る人が差別してるとかさ。そういう二重三重構造になっているところをさ、みんな言わないじゃん。一切。そういう二重三重の差別構造を今後は明らかにしたいと私は思っているのね。

枡野 僕がエゴサーチ(をして自分について書かれたこと)に反応しちゃうのも、「あなたが書いたことは、こうこうこういうことじゃないですか?」って言いたくなっちゃうのも、そこかもしんないなぁ。たとえば、町山さんが言うことは僕は納得なんだけど、町山さんに便乗して言う人はなんて馬鹿だと思っていて……。

中村 ははは。

枡野 それで、わざわざ、「あなた、おバカさんですよ」って言いたくなっちゃうの。

二村 その枡野さんの活動の、枡野さんになにか言ってくる人たちに対する冷静な切り返しの集大成だよね、この本(『愛のことはもう仕方ない』)は。何章かを費やして、ず~っとやってるよね(笑)。

枡野 それをね、町山さんは、「枡野はそういうこと(一般人からの批判や意見への反論)が得意で、本当は強いくせに、なのに弱いふりしててズルい」っておっしゃってて。それは確かに、僕はわざと弱ぶってるつもりはなかったけど……

二村 いや、今日(この公開鼎談の前に同じ会場で)おこなわれた、この本の読書会でも、参加者の人から「枡野さんは強い人だと思いました」みたいな意見が出たのね。でも僕は強い弱いの問題じゃないような気がするんだよなぁ。性癖でしょ? これは枡野さんの。

枡野 そうかも! だから、自分はそうしなきゃいけないっていう勝手な使命感があるのね。それは、うさぎさんに言わせると「そんなの、そっとしておけばいいのに!」になるなんだろうけど。あと、この対談シリーズの企画と構成してくれてるFさんは「マスノのサーチ&デストロイ」[注]って言っていて、僕がエゴサーチしてはデストロイしていくっていう……。

二村 皆殺しだね!(笑)

中村 『マッドマックス』[注]みたいじゃん(笑)。

二村 問題は(枡野さんがエゴサーチで枡野さんについてツイートした人を見つけては)デストロイすることで、デストロイされた側はひねくれてムカついてさ、「枡野怖い」「枡野に粘着された」と言うだけになってしまうことでさ。

枡野 はい。

二村 今日みたいな場(読書会&公開鼎談)で枡野さんの本をみんなで読んだり、枡野さんの言葉を直接聞けば、枡野さんの作業の意味がなんとなくわかるんだけど、著者から(Twitterなどネット上で、顔を見ずに)文句だけ言われても、コミニュケーションは深まっていかないんじゃないかな?

枡野 ただね、たま~~にね、それ(エゴサーチ&デストロイ)で仲良くなることがあって。それが嬉しくて、ついやっちゃうんですよね。

中村 まぁそういうことはあるかもね。

枡野 実際にそれで深く仲良くなった人がいるから……。

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