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東京大学による女子学生家賃補助への批判が残念な理由 日本の女子達は3200億円程の不平等を受けている

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女子専用の奨学金を何人にいくら渡すべきなのか?

シナリオ1:現在の男子並みの公教育支出を、国公立大学の女子向けフルパッケージ奨学金を活用して実施する

 教育を受けるためのコストは、直接費用と呼ばれる授業料に加えて、間接費用と呼ばれる「教育を受けずに働いていれば得られたであろう賃金」があります。この二つを合わせると、日本の女子が大学教育を4年間受けるコストは約1270万円になることを第二回目の記事でお話ししました。

 このコストをすべてカバーするということは、入学時に1270万円の奨学金を渡すことになります。上で言及したように、同年齢内で比べると、男子は女子よりも約3262億円多く公教育支出を受け取っているので、女子向けの奨学金を3262億円用意することにしましょう。これを用いて国公立大学の入学枠を拡大して提供した場合(女子学生への支払い1270万円+大学への支払い720万円)、16392人の女子に提供すると公教育支出が男女間で等しくなります。

シナリオ2:公教育支出額は一定に保ちつつ、公教育支出が男女間で等しくなるところまで、国公立大学で女子の授業料を免除する

 現在の日本の政治状況を考えると、公教育支出を3262億円増加させることはあまり現実的ではないかもしれません。そこで、公教育支出額は増加させず、その配分が男女間で等しくなるようにします。一学年が高等教育機会を通じて受け取る公教育支出は約1兆6640億円なので、これを男女平等に配分すると約8320億円になります。現在女子全体が受け取っている公教育支出は前述のとおり約6689億円なので、これを埋めるために奨学金を1631億円用意することにします。国公立大学の入学枠を拡大して、直接費用(初年の納付金28.2万円+授業料53.6万円×4年間=約242万円)だけをカバーした奨学金を提供した場合、16946人に提供すると公教育支出が男女間で等しくなります。

 この他にもいくつかシナリオを描くことはできますが、いずれにせよ、ここまでしなければ男女が受け取る公教育投資額が等しくならない=それほどまでに男女間格差が大きいということが重要なポイントです。もちろん、女子学生が増えるにつれ、このパッケージは額を減らすか規模を減らすかしていくことになりますが、最初の段階でこれだけのインセンティブを提示し、教育を受けるためのコストを0にすることで、女子の教育の私的収益率を上昇させれば、女子の進学行動に大きなインパクトを与えられるのは容易に想像がつきます。また、政府や大学が女子教育の推進に真剣に取り組むつもりがあるという態度を示すことで就学を目指す女性が増える効果も期待できるでしょう。

 注意点を述べておくと、上の試算は次の3点を考慮に入れていません。 (1)理系の方がより多くの税金が投入されているが、女子学生は理系の方で少ない、(2)高等教育の中でもより高次の教育段階でより多くの税金が投入されていると考えられるが、女子学生は教育段階が上がるほど少なくなる、(3)国立大学の中でも旧帝国大学は公的資金の受取額が大きいが、他の国公立大学と比べて女子学生比率が低い。この3点はどれも男女間の公教育支出格差を拡大させる方向に働くという点を考えると、公教育支出は女子一人当たりに対して45万円の不平等が存在していて、同い年の男女全体で比較すると約3260億円の差が生じている、という値はあくまでも保守的な最低ラインであり、実際はこの試算より大きな値になっていると考えられます。

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