内閣府が少子化対策として進める「結婚応援全国フォーラム」の写真を見て、結婚といいつつ、おじさんばかりで結婚する当事者がいない違和感をツイッターに書き込んだところ、「相変わらずおっさんだらけ」や「写真のみならず資料もクラクラするのがてんこ盛りだった件」などと政府の婚活事業が役所や企業の人たちで進められていることへの疑問などが多く表明されました。ツイッターでは、福井県が事業として行なっている結婚や出会いの相談を受けるボランティアの「縁結びさん」から「誰か独身の女の人はおらんか?」と聞かれ、仕方なく友人を紹介したところ、その友人は縁結びさんから会うなりため口で「選りごのみするな。自分の歳を考えろ。女は結婚さえすればいい」と説教され、結果的に友人を失うことになってしまったという悲劇も語られていました。
結婚応援フォーラムで紹介されている事例には、銀行に「婚活デスク」を置き専従担当者を配置する、結婚を世話するシニアを組織し「婚シェルジュ」制度を導入する、4人制の「タッチバレー」に40歳未満の男女を参加させ懇親させる等々があり、全国の自治体、企業や各団体に号令をかけ、婚活支援に総掛かりで乗り出している様子が浮かび上がります。
婚活は、いまや国家プロジェクトなのです。加藤勝信少子化・男女共同参画担当大臣は、結婚応援フォーラムに参加するため全国を飛び回っています。2013年度には「地域少子化対策強化交付金」が創設され、30.1億円、翌2014年度も同額、併せておよそ60億が計上されています。「結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援」がキーワードで、その中でも婚活・結婚支援に大きな金額が使われています。8月に発表された2016年度補正予算では、少子化対策交付金に40億があてられ、婚活支援などにとてつもない金額の税金が投入されています。
2015年度には、北海道から沖縄まで全国の47都道府県すべてがこの事業に取り組んでおり、その事業総数は、353件に及んでいます。全国津々浦々の市町村がこぞって政府の交付金に飛びつき、婚活・結婚支援を含む「切れ目のない支援」に邁進しているのです。
例えば福岡県が運営する結婚・子育て応援サイトでは、「あなたのライフプラン」を考えようというデモンストレーションがあります。これは「結婚は何年後にする?」「子どもは何人ほしい?」などの質問で、結婚への意欲や欲しい子どもの数を回答すると、その後のライフプランが示されるというものです。「パートナーに出会えそうなのはあなたが何歳の時?」「結婚はあなたが何歳の時にする予定?」などと結婚について具体的な希望を持っていないと前に進めないものですし、子どもについては、選べるのは「1人、2人、3人、4人、5人」。子どもを持たないという選択肢は選ばせてもらえない仕掛けになっています。
福岡県のサイトはピンクやオレンジの色合いで、見かけだけでは「ポジティブ・キャンペーン」というソフトな印象を受けますが、戦前の「産めよ増やせよ」の発想がゲーム仕立てで甦っており、不気味です。
いま若い女性たちを早く結婚させ子どもをたくさん産ませようと、国家が自治体・企業・団体を交付金・補助金という撒き餌で釣る「一億総活躍」という名の国家総動員が進行中なのです。