「LGBTの人は嫌でしょうね」というと、「そこはどうなんですかね」と笑いつつ「嫌な人には強制しないですから。単に掲示だけにするとか、事前に送っていいかという確認をした人にだけしかメールを送らない」と答えていました。「人口の5〜8%のLGBTのことは考えないといけないのでは。当事者は息苦しいと思う」と水を向けると「行政としては考えないといけないんでしょうけど、実際、そこまでは配慮していない」と言い、少子化対策のうちの課の範疇にはLGBTは入ってこないといいます。その上、どこの課が考えるべきなのか所管がわからないという言葉も聞かれました。人権担当部署と連携をとっていると言っていたにもかかわらず、です。
一連の婚活施策によって、どれだけの成果が上がっているのでしょうか。
A主任は、お見合い成立件数1000件(2015年)、成婚数は450組(全県5年間)というデータを提示し、さらに「職場の縁結びさんには合コンを設定してもらう」などともいっていました。女性活躍支援課で話を聞いているのに、「合コンは3対3がちょうどいい」といった「婚活」や「合コン」という言葉がお話を伺っている間に頻繁に飛び交いました。「女性活躍」とは合コンや婚活の事なのかという印象を抱いたくらいです。
A主任によれば、会社が結婚支援をしようとするメリットは「合コンによって、社員のコミュニケーション力を上げることになる。結婚すると会社に対する忠誠心というか、真剣度が上がる。人口減少に歯止めをかけることで社会貢献ができる」の3点だといいます。国家の少子化に貢献する企業、結婚して企業に忠誠心を尽くす社員、自治体の婚活セミナーや合コンによって市民がコミュニケーション力を上げ、企業の営業力をアップする、ということのようです。これでは、国家のために企業があり、企業のために社員がいる、そして社員は企業を通じて国家に貢献する、という風に国と自治体と市民の関係が逆転しています。市民は国家のために貢献する立場だったのでしょうか。
1時間半ほど取材しましたが、終始ノリノリで「課長、局長まで含めてポジティブシンキングの人しかない。いいことをやっているので楽しい」とA主任は、本心から楽しんでいる様子が伝わってきました。
このような「結婚早く!」「みんな結婚しよ」という結婚を急かすムードが、国の少子化対策資金を原資に醸成されているということは、「結婚=早めの子ども」が福井中だけでなく、国中で期待されているということになります。こうした空気は、結婚したくない人や子どもができない人、子どもをすぐに持てない人、子どもを欲しくない人、LGBTなどの性的少数者を追い詰めるだろうことは想像に難くありません。