ありのままを見つめられない男性には、「心の醜形恐怖」がある? 「男性論ルネッサンス」検証

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ありのままに見つめられない「心の醜形恐怖」

まく 例えば田中さんの『<40男>はなぜ嫌われるか』は、30代後半から40代前半を生きる男(<40男>)の置かれている状況を色んな角度から光を当て、著者の田中さんがコメントをしていく、という本でした。ファッションや、友だち、恋愛感情、仕事、夢、政治など。僕自身も36歳ですから、読みながら自分の今の状況と重ね合わせて思うところが沢山ありました。

杉田 語り口がうまいし、とてもわかりやすいですよね。色々なマンガを引用したりして。

まく 一方で、田中さん自身が結構苦しそうだな、と思ったりもしたんですね。あとがきに「自分も書いていて苦しかった」といったことを書かれていましたが、一方で鬱陶しいオジサンを批判するときに凄く筆が踊っているようにも見えたりして。引き裂かれてるんだろうな、と。田中さんのこの書きぶりが、まさに男性が男性問題を語るときの難しさを表していたのかもな、と。そんなふうに思いましたね。

杉田 田中さんは、最近の男性学ブームの中心にいる人ですね。多くの本を出しているし、メディアへの露出も多い。個人的な印象だと、かつての50代・60代の男性をメインターゲットにしていた1990年代的な男性学を、〈40歳〉という中年層まで押し下げてきた、という印象があります。とにかく、さらっと読めて、とてもわかりやすい。けれども、今まくさんが言ったように、ところどころに引き裂かれた感じがあるんですよね。

たとえば、自分の姿を鏡に映して、何も成し遂げられなかった40男のしょぼい現実をちゃんと見つめよう、と何度も読者に語りかけるところ。批判もあるかもしれないけど、僕はあそこ、好きなんですよね。ちゃんと自分の惨めな現状を認められないと、色々と手遅れになるし、さらに「男らしさ」をこじらせてしまうよと。若い女性からの性的な承認を求めたり、「若いですね」と言われたくて仕方なくなる、とか。

僕には鏡恐怖症と醜形恐怖があるんですけど、それほど病的な形ではなくても、もしかしたら、大人の男性たちの中には「心の醜形恐怖」みたいなものがあるのかもしれないですね。上でも下でもなく、右でも左でもなく、まっすぐに、心を揺らさずに鏡に映った「男としての等身大の自分」に向き合うことができる、っていうのは結構大切ではないか。僕、ほんとにそれが出来なくて、日々、困ってますから……。

まく うーん……、いやー、わかります。「自分をありのまま見つめよう」というところ。ホント、難しいです……。二村ヒトシさんも「自己受容」が重要だ、と述べていて、田中さんの本と同じようなメッセージを送ってくれているとは思うんですが……。本を読んで「自分のありのままを認め、受け入れよう」と思っても、日常生活で自分のことを思っているときは、「僕はダメだ……」とか「これで(凄く)良いんだ!」とか、0か100かになっちゃう。「心の醜形恐怖」、これは難敵です。ラスボスです。

杉田 『<40男>はなぜ嫌われるか』の最後の方に出てくる「これからの40年」問題もひしひしと怖いところですね。男性は特に、人生の折り返し点のあとの、40歳~80歳の時期の人生の「物語」がないんだと。若い頃は学校、恋愛、仕事、家族……みたいな分かりやすい上昇型の物語があるけど、人生の限界がみえて次第に心身が老いていくと多くの男性たちにとっては成長型モデル以外のモデルがない。そうすると会社や仕事に自分を託すしかなくなるし、女性たちと比べて会社以外の社会的なネットワークが薄い。

田中さんが男性にとっての友達問題の大切さを強調するのもそのへんでしょうね。男性は定年退職後に、仕事関係の「知り合い」はたくさんいたけど、「友達」はいないことに気づくんだ、とか。仕事の成果や能力の競い合いではない、たんなる「雑談」が出来る男性同士の場がなかなかないんだ、とか。

まく ホント、読んでいて、突き刺さります……。僕も「友達」はいないし、「雑談」できる場にもなかなか行かないし、行っても「雑談」できる自信はないし……。誰かと会ったときに、「仕事」とかの役割抜きに、一緒にいて何となく楽しむ、ということをあんまりできるイメージがないんですよね……。

これはきっと、やらずにクヨクヨ「無理なんじゃないか」と妄想を膨らませるんじゃなくて、実際にやってみて「ああ、じんわり楽しいな」という経験を重ねるのが一番なんだろうな、とは思ってるんですが、なかなかね……。

田中さんの本、ホントに耳が痛いんですけど、その痛さが大事なんだろうな、ともすごく思います。いっぺん「底つき体験」というか、とことん「このままじゃマズイ」と思わなきゃ変わろうという行動に出られないですから。多くの男にとっての、40歳~80歳の人生の「物語」、なんとか僕たちの手で作りたいものですねえ……。

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