ありのままを見つめられない男性には、「心の醜形恐怖」がある? 「男性論ルネッサンス」検証

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早くおじいちゃんになりたい!

杉田 まくさんからすると、田中さんは少し年上感があるんじゃないですか? 僕の印象だと、田中さんの本って、読んでいると40歳よりもちょっと老けている感じがあるんですよね。最初読んだ時に、もう少し年上の人なのかなと思ったら、同い年なのでちょっとびっくりした。

まく ええ、少し年上感はありましたね。出てくる話題も、僕より少し上の世代の感じは、確かに。ただ世代間のギャップというより、「田中さんって僕と違って、ファッションとかに乗っていた、乗ろうとしてきた人なんだな」というギャップの方が僕には気になりました。僕はこれまで、ファッションのことを全然気にしないで生きてきたので。僕と同い年で、それなりにファッションに気を使ってきた人は世代間ギャップの方であれこれ思うのかもしれないけど、僕はそこはあんまり……。それより、モテ/非モテ的なギャップの方が気になっちゃって。

杉田 確かに田中さんにはバブル的なものの記憶があるんでしょうね。でも一度それが破綻して、若い頃に挫折というか幻滅のようなものを経験した、というか。若い頃に就職氷河期やデフレ不況などがあって、戦後的な男性のライフスタイルの梯子を外されたという。

まく なるほど。

杉田 しかし、これまで何となくいっしょくたにしてきましたけれど、まくさんは「中年男性」「おじさん」というアイデンティティはまだ無いんじゃないですか? 36歳ですよね。

まく 僕は仕事の関係で、自分よりも15歳近くも年の離れた若い人と一緒にいる機会が多いから、普段「自分はおじさんだ」と意識するようにしているので、その影響かなあ。自分が「おじさん」だという感じは、なるべく大切にしてます。それこそ田中さんの本を読んだ影響もあるかもしれないけど。自分が「若い」と勘違いしないようにしていると言いますか。実際、若い人と会話していると、世代間ギャップを感じるシーンは多いですしね。

杉田 職場環境のことは大きいですよね。田中さんも大学教員だから、そういう意識はあるのかな。僕はいまフリーライターで、一人で家にいる時間が多いから、その辺の違いもある気はしますね。

まく なるほど。突然ですけど、僕、早く「おじいちゃん」になりたいんですよ。そういう気持ちって、杉田さんにはないですか?

杉田 どうだろう。あまり考えたことないですね。

まく ないかー……。なんか、色々降りることができて良いな、と。すいません、突然へんなこと言って(笑)。

杉田 様々な欲望やしがらみから早く解放されたい、解脱(?)したい、という気持ちなら、少しわかりますけれどもね。ただ、僕の印象だと、たとえ年老いてじいさんになっても人間は色々な欲望やしがらみから解放されたりはしないような……。かえって幼稚な欲望がむき出しになったり、がんじがらめになったり……。

まく うう、そうか……。確かに、現実の「おじいちゃん」は、そうなのか……。

杉田 もちろん色々な欲望や自意識から自然に「降りられる」老人もいるとは思うけど。でも老人になっても介護施設先でセクハラしたり、パワハラしたり、小さな権力をふりかざしたり、リハビリする男同士で能力競争や承認欲求を戦わせあうというのは普通にあることですから。そういうじいさんになってしまうのは怖い、という気持ちは正直ありますよ。「男」という病が年齢によって自然に解決する気がしないというか。これは非常に傲慢な言い方かもしれないけど。ただ怖いものは怖い。

 だから田中さんが「鬱陶しいおじさん」にはなるのは嫌だ。「清々しいおじさん」になりたい、とおっしゃるのは何となくわかるんですよ。僕も人間としてはかなり鬱陶しいタイプですからね……。ただ、僕の『非モテの品格』等の男性論はいまだに「こじらせ青年」というか、田中さんの中年らしさに比べるとだいぶ子どもっぽくて成熟していない感じがしますが……。

(次回、「40男」を嫌っているのは女性ではなく自分? 軽さと過酷さを兼ねそなえた『〈40男〉はなぜ嫌われるか』に続く)

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