「男の産休」に言及した安倍首相 制度はあるのに低い男性の育休取得率を改善させるには?

【この記事のキーワード】

実は、男性に限らず、育休取得率は「制度がいかに整っているか」が直接的に取得率の上昇につながることがこれまでの研究で明らかになっています。たとえば、非正規雇用者が多数を占めるオランダの場合、育休制度が整っている公共セクター(つまり公務員が多数を占める分野)の育休取得率は80%を超えていますが、育休制度が公共セクターほど整っていない私企業における育休取得率は25%程度と低迷しています。日本の場合、育休については男女問わず既に制度があります。あとは「取れる雰囲気」ができていくことが重要です。

この「育休を取れる雰囲気」を後押しするのは政府による育休制度の改革です。

たとえば、アイスランドでは育休制度を大幅に改革し、3カ月は母親、3カ月は父親、3カ月は「両親でシェア」するという形に変えたことによって、2001年から2008年のわずか数年の期間で男性の育休取得率を倍増させることに成功しました。また、ノルウェーでは2006年にはたった4%だった男性の育休取得率が、2007年に育休改革を行い「育休における父親のクオータ制」(父親のみ取得可能な育休期間)を導入したことによって2010年までに89%まで伸びました。

日本と同様、家庭における伝統的性役割分業が強かったドイツでも、男性の育休取得上昇を目的として、「母親が取得すべき産休・育休」から「親時間制度」への改革、父親が請求しなければ消滅する2カ月の「パートナー月」制度など、父親の権利意識を刺激する、職場の育休取得を促すといった育休をとりやすい雰囲気への変化を目指した結果、2006年に3.3%だった男性の育児休業取得率が2010年には25.7%まで改善しました。

またポルトガルでは、2004年に男性育児休業取得が義務化され、2000年に11%だった男性の育児休業取得率が2008年までに45%まで上昇し、さらなる改革が行われた2009年以降、取得が義務付けされている日数については68%、取得権利が認められている日数については57%まで男性育児休業取得率が上昇しました。

いずれも、出産・育児に伴う休業を「女性が取得するもの」という認識から「両親でシェアしながら運用しなければいけない」、つまり「マタニティ、パタニティという考え方から“ペアレント休業”へ」と、制度を変えたことによって、男性の育児休業取得率を上昇させることに成功しました。

今回例を挙げた国々でも、産休・育休取得に伴う、ハラスメントや「マミートラック」(仕事と育児は両立できるが昇給・昇進しにくくなる)と同じような「ダディートラック」の問題はありました。それらを改善するために、政府主導で積極的な制度や法律改革を行い、働く「母親」からすべての働く「親」の働き方を変えるようにしていったのです。

こうした他国の成功事例も参考にしながら、安倍首相を始めとする行政関係者には、もっと踏み込んで、最低でも国家公務員男性の産休・育休取得の義務化や育休取得のクオータ制を推し進めるくらいのことをしてほしいものです。

参考文献
OECD, 2016, Parental leave: Where are the fathers?
ILO, 2014, Maternity and Paternity at Work 2014
JILPT, 2012年, 労働政策研究報告書 No.151ワーク・ライフ・バランス比較法研究<最終報告書>
フィンランド大使館,2016年11月,フィンランドの子育て支援

1 2

あなたにオススメ

「「男の産休」に言及した安倍首相 制度はあるのに低い男性の育休取得率を改善させるには?」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。