実写化バービーは“ぽっちゃり”コメディアン 多様な体型を提示するマテル社は「強さ」と「確信」を芽生えさせる

文=堂本かおる
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スーパー肥満大国USA

 エイミーはあくまで“ぽっちゃり”の範疇だが、アメリカの肥満事情、実は度が過ぎている。以下は成人女性の体重分布だ。

・適正体重(49〜65kg):全女性の32%
・体重過多(66〜78kg):全女性の28%
・肥満(79kg〜):全女性の38%
( )内はアメリカ女性の平均身長162cmの場合の体重。
Centers for Disease Control and Prevention(保険福祉省疾病対策センター) ※インチ・ポンドから換算しているため、どの数値も若干の誤差があります。

 ノーマルな体重の女性は3人にひとりしかいない。肥満の理由は一部の疾病ケースを除き、多くは食生活と運動不足、さらに貧困まで含まれるが、アメリカではごく当たり前のライフスタイルを送ると大方の人間は太ってしまう。ジュースのボトルからお菓子のパッケージまで、なんでも日本のものより優に一回りは大きい。食事は油分・糖分・塩分が高く、これも分量がハンパではない。これらを食べ続けると当然、太る。すると糖尿病や心臓病など深刻な病を発症する。皆、外観と健康のためにダイエットとエクササイズに励むが、標準体重をキープするのはかなり難しい。

 だからと言って人生を諦めるわけではない。女性ならキュートに、セクシーに装い、人生を謳歌したい。だからこそあちこちにたくさんある、いわゆるLサイズ・ブティックでは体型をカバーする地味なデザインではなく、ビジネス用のスーツ、パーティ用の華やかなドレス、セクシーなランジェリーまで何でも売られている。広告に登場するのは“プラスサイズ”と呼ばれるふくよかな体型の専用モデルで、もちろん皆、美しく、堂々としている。

 とは言え、現実にはありえない極細体型のバービーに憧れる人もいる。実際、整形を繰り返し、バービーの体型に近づけようとする人たちの写真がネット上に少なからずアップされているのは周知の通りだ。

 実のところ、ぽっちゃり型バービーはどれほど売れているのだろうか。マテル社のウエブサイトを見るとすべての体型のバービーが販売されているが、トップ画面に写っているのはオリジナル体型ばかりで、ぽっちゃり型は一体のみ。どうやらマテル社は、女の子&女性への啓蒙と売上げ維持の狭間を微妙なバランスで綱渡りしているようだ。

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