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実写化バービーは“ぽっちゃり”コメディアン 多様な体型を提示するマテル社は「強さ」と「確信」を芽生えさせる

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私は「強い」女性

 話をエイミーに戻すと、彼女の「鏡を見ると自分自身が判る。私は美しくて、強くて、セクシーだと感じる」という言葉にある「強い(strong)」は、アメリカ女性が自尊心を表すためによく使う言葉だ。仕事、勉強、育児など、なんであれ自身の目的・目標や義務のために頑張る女性、もしくは病気やDV、離婚など困難に打ち勝とうとする女性が「私は強い」とプライドを込めて言う。

 セレブであれ、一般人であれ、女性がまっすぐに前を見つめ、「私は強い女性です(I’m a strong woman.)」と言うのを聞く時、こちらも背中に一本、筋が通る気分になる。「強い」とは決して華やかなことではなく、地道な努力と諦めない精神力のことなのだ。それを隠すことなく、誇りを込めて世界に宣言する女性のなんと美しいことか!

 その強さが外観にも現れる女性がいる。テニスのスーパースター、セリーナ・ウィリアムズだ。セリーナはテニス・プレーヤーとしてグランドスラム合計優勝回数現役1位、生涯獲得賞金6,000万ドルなど数々の金字塔を打ち立ててきた。姉のヴィーナスと共に女子にパワーテニスを持ち込んだ功績者ともされている。特にサーブは男子並みのパワーだ。そのパワーを生み出す身体も当然パワフル。175cmの骨太な骨格、上腕には男性並みの筋肉ががっしりと付き、腹筋も見事6つに割れている。

 テニス選手として最大の称賛を浴び続けるセリーナだが、外観については「女なのに……」と揶揄されることも多い。そんなセリーナは、あるCMでこんな独白をしている。

「強過ぎる、セクシー過ぎる、テニスに集中し過ぎる、意地悪って言われるけれど(笑)、強過ぎるってどういうこと? 私には分からない」

 ここでの「強過ぎる」はセリーナ式のパワーテニス、および勝率のことだが、人並み外れた体型をも指しているのだろう。しかしセリーナは自分の強い肉体を愛して止まない。プライベートでは胸元の大きく開いたセクシーなドレスを着、バケーションでビーチに行けば、あっぱれなビキニ姿を自らスナップチャットする。エイミー同様、強さとセクシーさは共存すると考えているのだ。そんなセリーナを敬愛するのが、やはり強い女性であるビヨンセだ。最新作『レモネード』のビデオにセリーナを招き、二人そろってストロングな太ももを披露している。セリーナはエイミーと同じピレリ社のカレンダーでも見事な肢体を露にしている。黒いパンティだけを纏い、見る者に漆黒の背中を向けたストロングなヌード写真だ。

 先のCMの後半でセリーナはこう言う。「私は(自分を)確信している(I’m confident.)」 自分を肯定し、自信を持ち、精神的に安定した状態であることを示す“be confident.”もアメリカ人にはとても重要な概念なのだ。

 体全体がマシュマロのように柔らかくぽっちゃりしたエイミー・シューマー。固い筋肉の鎧をまとったセリーナ・ウィリアムズ。従来の女性の美の概念とは全く異なる体型の二人に共通するのは、内から発せられる「強さ」と「確信」、そしてセクシーさなのである。新たな体型のバービー人形を売り出し、実写版映画の主役にエイミーを抜擢したマテル社には、子どもたちが「強さ」と「確信」を持てるよう、革新的な冒険を続けてもらいたい。
(堂本かおる)

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