社会

格差社会ゆえに過熱する「お受験」。翻弄される母親たちの困惑と、子どもの幸せに対する切なる思いとは/小説『ママたちの下剋上』深沢潮インタビュー

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深沢「知り合いから聞いた話ですが、子どもが超有名私立の中等部に入ってママ友のランチ会をそのクラスでやったら、欠席者がひとりもいなかったそうです。つまり欠席できない雰囲気がある。働いている母もいるはずですから、休んで来ているのでしょうね」

――働いているから忙しい、とは言えない雰囲気……。有名な小学校や中学校に子どもを通わせているあいだは、その女性が母になる以前に持っていた属性を、いったん脇に置かねば母親として務まらないのですね。

深沢「これは有名校や私立校にかぎった話ではありませんが、PTAの集まりが平日昼間にあるなど、学校には働く母親に優しくないシステムが少なからず残っています。私は自分自身が子どもを受験させてみて、周囲に専業主婦が多いことにびっくりしました。現代の社会においては専業主婦で子育てだけに専念できる人は、特権階級ですよね。でも有名な学校では、母の多くが専業主婦。実際子どもに付きっきりにならないと、超高学歴を得るようには育てられないのが現状です」

専業主婦家庭と、共働き家庭

――『「灘→東大理III」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』(KADOKAWA)の著書で有名な、“プロお受験ママ”佐藤亮子さんも専業主婦でした。

深沢「そうなんです。そこまで子どもの教育に手間をかける専業主婦が多いと、両親が働いている家庭の子どもは学習面でハンディができます。医者や弁護士、官僚、有名企業などの、世の中で“ハイスペック”だといわれている人が集まる世界に、なかなかアクセスできなくなってしまいますよね」

――今の社会では少数派である専業主婦家庭で、経済的にも余裕がある親の子どもが高学歴を得て社会を動かす地位に就く構造があるのですね。しかし同じような家庭の子どもしかいない均質化された世界で育った人が、異なる環境の人に対して優しい社会を作れるかというと、疑問が湧きます。

深沢「無理でしょうね。例えばそういった人が官僚になったとして、働く女性やシングルマザー、貧困家庭をサポートするのは難しい。子どもの頃から自分と同じような環境の人しか周りにいないわけですから、想像力が働かないんです」

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 小説に登場する主人公の夫がその典型。高学歴で母は専業主婦、加えて金持ち家庭に育ったお坊ちゃまでした。彼は悪い人間ではないけれど、単純に他者に対する理解がありません。妻の仕事を尊重せず、育児負担をすべて妻に押し付ける前提での子ども好き発言など、無神経な言動が多いのです。それは作中のキャラクターだけのことではなく、一般的に“ハイスペック”な男性は妻も自分の母と同じように専業主婦で教育に専念するよう求めるため、同じような環境で育つ“ハイスペック”人材が再生産されていく仕組みがありそうです。

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