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「女子の就学率が低いのは頭が悪いから」のウソ 優秀な女子の潜在能力を活かせ!

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 上の図は、PISAにおける、日本の女子の高学力層の分布です。高学力に分類される日本の女子の割合は、数学では韓国に次ぐ2位、科学でもフィンランドに次ぐ2位と、OECD諸国の女子と比べて多いことが分かります。日本の女子の高学力層は15歳時点ではOECD諸国の女子と比べて分厚いにもかかわらず、大学進学の段階になると先進諸国の女子と比べてトップスクールへ進学していない現状があることがお分かりいただけたかと思います。

(注: 「日本の女子はOECD諸国の女子と比べれば優秀ではあるが、日本の男子と比べると学力が劣るため、現状のようになっているのではないか」と思われるかもしれません。確かに日本は、PISAでは男女間の学力差が存在する国に分類されますが、それでも連載で取り上げてきたほど大きな進学行動の差が出る学力差とは考えづらいです。また、中学校2年時点でのTIMSSでは、有意な差ではないものの理科でも数学でも女子の方が男子よりも好成績を収めています)

 国際学力調査の結果を見ると、試験の結果が進学行動へと結びついていないという日本の現状が浮き彫りになります。このような現象が発生するのは、教育の収益率が低い・明示的ではない(前回の奨学金政策はこれへの対処策になります)、女子教育の環境に問題がある(次回扱います)など、いくつかの原因が考えられます。その他に、“女子に対する慣習的な壁”が存在することも挙げられるでしょう。国際機関では、女子教育に限らず、人権を行使する上で障壁となっている慣習的な壁を打破するために、開発のための対話(Communication for Development: C4D)という手法を用いて、権利の保有者と人権に対して義務を負うものに対して働きかけをすることがあります。以下ではC4Dを用いた女子教育推進への取り組みを紹介したいと思います。

開発のための対話(C4D)を用いた教育政策

 「開発のための対話」は聞きなれない言葉だと思いますが、この手法はエボラ出血熱やジカ熱対策でも用いられた、国際協力分野では注目を集めているものです。

 簡単にまとめると「対話を通じた行動変容や社会慣習の打破によって人権侵害が発生している状況の改善を目指す」というものです。教育分野では、村の長老や宗教的指導者・保護者や地域の住民・子供たちそれぞれに教育の重要性を説き、考えてもらうことで、例えば「男子は一日でも早く働いて一人前になるべきだ」とか「女子は早く家事を身につけ子供を産むべきだ」といった、子供たちが教育を受ける権利を行使するうえで阻害要因となっている慣習的な壁を、社会規範や行動変容によって打破するためにこの手法が用いられることが多くあります。

 この手法を日本の女子教育問題に適応すると、以下のような働きかけができるのではないでしょうか。

■高校の教員への働きかけ
高校の教員は、進路選択を控えた子供たちにとって身近なロールモデルとなるだけでなく、進路指導を通じて子供たちの進学行動に大きな影響を与えます。日本の女子が学力のわりにSTEM系やトップスクールに進学していないことを考えると、文理選択を控えた生徒に「男子は理系、女子は文系」と思い込んだ助言を与えたり、進路選択を控えた男子には挑戦させるような受験校を薦めるが、女子には手堅い受験校や手に職系の学部を無意識のうちに薦めたりする、といった行動が一部で起こっていることが考えられます。教員養成課程や現職研修の機会を通じて、能力以外の要因で高等教育へのアクセスが阻害されるのは子供の権利条約に反する人権侵害であること、男子と女子に平等に接することを働きかけていくことができるでしょう。

■家庭への働きかけ
保護者も、教員同様に子供たちの進学行動に大きな影響を与えます。日本の女子が学力のわりに高等教育を受けていないことを考えると、「女の子に教育は必要ないし、教育を受けると結婚できなくなる」「息子は浪人しても良いけど、娘が浪人するのはちょっと……」といった考えをもった保護者が一部にいることが考えられます。PTAなどの機会を通じて、教員に対する働きかけと同様のものを実施していくことができるでしょう。

■子供たちへの働きかけ
子供たちが学習・進学行動を決めるうえで、子供たちの間での相互作用(ピア・プレッシャー)も大きな影響を与えます。例えば、ある女子生徒が理系選択を考えていたとしても友人が全員文系選択なので文系を選択する、またこれと逆にあるグループの一人がグループ全員と異なる学習・進学行動を取ろうとするのをグループとして抑制する、ということもあるかもしれません。教員や保護者に対してのように生徒会などを通じた働きかけだけでなく、友人同士など自分たちで話し合う機会を設けてあげることも重要でしょう。

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