――中古マンションは都心でも余っていると聞きます。それなのに値段が上がっているのですか?
田中「おっしゃる通りマンションの在庫数は上がっています。普通は在庫数が上がれば金額が下がる……需要と供給の関係ではそうなるはずですよね。このグラフを見ると実際2012年以前には在庫件数の増減と価格は反比例して連動しています。ところが2012年から2016の始めまで在庫数が上がっているのに、価格も上がっているのです。その理由が“超低金利”。つまり日銀が銀行に貸し出す際の金利を極端に下げる黒田さんの政策により、銀行が顧客に貸す際のローンの利子も下がったということです。すると個人が不動産購入のために捻出できる金額が上がる。それを受けて住宅の価格も上がっていくのです」
――現在はマイナス金利で住宅購入の好機だと言われていますが、買う側の購買能力にあわせて家の価格も上がっていたんですね……。
田中「ショックですよね。今日お集まりいただいた皆さんもローンを組む前提だと思うのですが、今が借り時だと思ったら、住宅価格も上がってしまっている。だから、ひとつの要素だけで煽られて買ってしまうのは危険です。私の読みでは、マンションの価格は今、上がり切っていると思います。都心で人気の千代田区、中央区、港区、品川区、渋谷区、目黒区あたりは今まで続いていた上昇傾向が、ストップしています。なかでもタワーマンションに関しては、すでに去年の秋口ぐらいから値段が下がり始めているのです」
――確かに、グラフを見ると2016年の23区内マンション成約価格は微減しています。これは、タワーマンション価格が下がったということなんですね。ではマンション全体の価格も下がっていく可能性があるということでしょうか。
2018年、住宅価格変動のXデーが来る?
田中「それは今後の経済状態次第です。私の感覚ですと2017年は結構動くと思います。住宅価格は金利の他に株価と為替も影響するのです。現在はヨーロッパもアメリカも政治的に不透明感が強く、その影響で安定していると見られる円が買われ、円高になる。そうなると外国人投資家が日本株を買いにくくなって、株価は下がります」
――それがどう、住宅価格に関連するのですか?
田中「一般的に高額なマンションを中心に、親が一部資金援助して買うという若い人が多いのです。援助資金がある高所得者の多くは、株を持っています。だから今後株価が下がると親御さんが援助できる金額が減ってしまう……そういったことが住宅市場にじわじわ影響してくるので、もし2017年に株価がガクッと下がれば、買い手が頼みにしている親の援助の額が減り、それに連動してマンション価格も下がっていく可能性があります」