学校制服は貧困の証? 「学校制服は貧富の差を隠す」がひとまわりしたニューヨーク

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制服の中でも現れるおしゃれ心と所得格差

 ニューヨークには公立と私学以外にチャータースクールが存在する。低所得地区の公立校がいくらがんばっても成績向上しないため、公立ではあるがカリキュラムを民間の教育者や団体に任せてしまう、いわば半官半民の学校が今、ブームとなっているのだ。公立扱いなので高校まで含めて授業料と入試はないが、従来の公立校より授業時間は長く、夏休みは短く、躾も厳しい。その一環として制服も必ずある。

 あるチャータースクールは創設者に韓国在住経験があり、アジア式の厳しい規律に感銘を受けて開校したとのこと。規律が生活と学力に反映すると考え、制服はボタンダウンのシャツにネクタイ+胸元に学校のロゴが入ったVネック・セーター、ズボンで見えないソックスの色まで黒無地のみと決める徹底ぶりだ。

 他のチャータースクールもチェックのジャンパースカートなど、従来の公立校のポロシャツに比べると伝統的かつ“きちんとした”制服であることが多い。しかし、そもそもチャータースクールは低所得地区に作られた学校なので、その制服を着ていること=低所得となってしまう。

 問題なのは、ニューヨークが全米随一の所得格差都市であることだ。ドナルド・トランプ次期大統領を筆頭にビリオネアが暮らすスーパーリッチ地区と、年間世帯所得が日本円に換算すると200万円にも満たない貧困地区が隣接していたりする。中流や低所得地区の学校に制服があるのに対し、リッチ地区にある成績の優秀な学校は制服を廃止している。勉強に専念する生徒は放っておいてもまともな服装で登校するし、ハデな格好をする生徒も成績はきちんとキープするからだ。

 狭い都市ゆえに駅や道ではあらゆる地区からの生徒たちが交錯する。実例として、わずか数ブロック離れて建つ2つの学校の一方が豊かな生徒ばかり、他方が貧しい生徒ばかりというケースもある。そこでは「制服を着ているのはあの学校の子だよね」ということになり、教育関係者の中にはそのスティグマを無くすために制服廃止を考える者も出始めている。導入理由のひとつが「貧富の差を目立たなくする」だった制服が、逆に貧富の差を目立たせてしまうという皮肉な結果になっているのだ。

 しかし、ニューヨークの子どもたちはプアだろうが、制服であろうがオシャレ心を忘れない。 チャータースクールも含め、バックパックとスニーカーには何の決まりもない学校が多い。制服を着なければならない生徒、特に中高生にとってこの2アイテムが非常に重要なポイントとなるのは当然だ。日本ではちょっとためらわれるほどハデなバックパック、ジョーダンのスニーカー、女の子ならUGGのブーツが必須アイテムだ。100ドル以上のものもあり、決して豊かではない家庭の子たちがどうやって工面しているのか正直なところ不思議だ。だが、彼らのファッションへの飽くなき情熱がニューヨークのストリート・ファッションを支えていることは確かでもある。

 ただし、ホームレスも含め、何をどう切り詰めてもジョーダンが買えない子どもたちもいる。私服校と制服校にとんでもない幅の所得格差があり、制服校の中にまた所得格差がある。最底辺にいる生徒たちの辛さは想像に難くない。それでもアメリカは本来、徹底して個を尊重するお国柄ゆえ、「ジョーダン/UGG禁止令」は決して出ないのである。
(堂本かおる)

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