
左上から時計回りで『クロワッサンで朝食を』『バチカンで逢いましょう』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ダウントン・アビー』公式サイトより
最近出たばかりのナイトウミノワ『いとしのおじいちゃん映画-12人の萌える老俳優たち』(立東舎、2016)を既に読んだ方はいらっしゃるでしょうか。イアン・マッケランやクリストファー・ウォーケンなど、還暦後も活躍するおじいちゃん俳優の魅力を軽妙に描写したエッセイ集です。これを読んで、おじいちゃんが出てくる映画をもっと見たいと思った方もいらっしゃるかと思います。
おじいちゃんがいるなら世の中にはもちろんおばあちゃんがいます。性別を問わず、良い役者は年齢を重ねると演技に味わいが出るもので、おばあちゃんの名優もたくさんいます。今回の記事はお正月ということもあり、長寿と繁栄を祈っておばあちゃんが登場する海外の映画やドラマを紹介したいと思います。
おばあちゃんの受難
悲しいことに、おばあちゃん俳優はおじいちゃん俳優に比べると厳しい立場に立たされています。とくにハリウッドにおける女性差別と年齢差別は深刻です。大女優メリル・ストリープは、取材に対して40歳を過ぎると魔女役ばかりオファーされるようになり、もう良い役が来ないのではないかという不安に苛まれたことを述べています。中年以降の男性スターの相手役としては35歳以下くらいの若い女優が起用され、マギー・ジレンホールは「55歳の俳優の相手役として37歳の女優は年を取り過ぎている」と言われたそうです。この調子では、中年、ましてやおばあちゃんといえるような年の女優が良い役を得られるチャンスは減ってしまいます。
このように、若くない女性が映画界で軽視されているのは良いこととは言えません。女性は若さや美しさだけで価値をはかられるモノではなく、子どもからおばあちゃんまで移り変わる人生を積み重ねる人間です。映画やテレビドラマはどんなことでも表現できる素晴らしい可能性を秘めた芸術で、男性だけではなく女性の老境も描けるはずですが、映画界、とくにハリウッドは中年以降の女性を描くにあたり怠慢だったと言っていいでしょう。年配の女性を描いたよい台本がなければ、名女優が老いていく様子を見ることもできません。映画界のおばちゃん・おばあちゃん不足は大きな問題です。