
Photo by U.S. Department of Agriculture from Flickr
Don’t be afraid. 恐れないで。
Be focused. 集中して。
Be determined. 心を決めて。
Be hopeful. 希望を持って。
Be empowered. 自分を高めよ。
今や「次期大統領はミシェルに!」の声が出るほどアメリカ国民から愛されているファーストレディ、ミシェル・オバマが、1月6日に最後の演説を行った。ミシェルの演説と言えば昨年の夏、選挙戦真っ盛りだった時期にトランプの妻メラニアが盗用したことで大騒ぎとなったことも記憶に新しい。盗用はアメリカでは非常に厳しく非難されるが、スピーチ経験のなかったメラニアにとってミシェルの強さと優しさの相俟った言葉は憧れの対象だったらしく、図らずしてミシェルの演説がいかに優れているかを証明する事件となってしまった。
この日の演説でミシェルは、いつものように「ガールズ」という言葉を使わず、男女を問わない「ヤング・ピープル」への語り掛けとした。しかし、演壇に立つミシェルを囲んでいたのは全員女性のスクールカウンセラーたちであり、スピーチは中高生、大学生、成人であっても大学などに戻ろうとする若い女性に向けられていたのは明らかだった。
スクールカウンセラーは、生徒たちと成績や進学についてはもちろん、家庭の問題や心の悩みについても相談を受け、時には思いもよらない妊娠など非常に深刻な状況にもかかわる仕事。教師に比べると陽の当たらない職種だが、生徒を支える大切なポジションだ。1月6日は「全米スクールカウンセラーの日」であり、ミシェルはこの日、全米から優れたスクールカウンセラーをホワイトハウスに招いていたのだった。
本来は教育関係者対象の演説だったのだが、ミシェルは、「ファーストレディ最後の演説」として多くのメディアが取り上げるのを予想していたのだろう、スピーチの前半は教育者に、後半は若い女性へと語りかけたのだった。
何がなんでも進学せよ!
ミシェルは女性に「可愛くあれ、綺麗であれ、セクシーであれ」などとは言わず、まして「気遣いをせよ」とも言わない。「恐れるな/集中しろ/決心しろ/希望を持て/自分を高めよ」、そして「可能な限りの教育を受けろ」と言う。
アメリカは教育がすべてのキーとなる。学歴による職種と年収の差が大きく、例えば、いくら優秀な高校を卒業しても大学に行かなければ良い就職はできず、収入も驚くほど低くなる。したがって何がなんでも大学に進むしかない。さらに一歩抜きん出た地位と収入を目指すのであれば大学院も必須となる。こうしたシステム自体の善し悪しはともかく、これがアメリカの現実なのである。この厳しい学歴格差社会をサバイバルするには、男女関係なく大学か院に進むべし。これがミシェルの明確なメッセージだ。
アメリカの場合、優秀であれば給付型の奨学金と学生ローンでなんとか進学できる。 しかし貧困地区に生まれると学級崩壊、ギャングやドラッグなど生徒を巻き込む犯罪の蔓延、十代の妊娠、勉強しないことがノーマルとなり、生徒たちも勉強する級友をバカにする、親が教育を受けていないことから家庭で勉強を教えられないなど、勉強する習慣・文化・環境が入手困難となる。
「この国には私と、私の夫も含め、豊かではない家庭の出身者も多いのです。けれどハードワークと良い教育によって、どんなことも可能になります」
思わず「それはあなたが生まれつき超優秀だからでしょ。私にはムリ!」と言いそうにもなるが、ミシェルはシカゴのサウスサイドと呼ばれる貧困+犯罪多発地区の出身だ。しかも子ども時代に父の長引いた難病という苦労を経ている。そうした厳しい環境にあってもミシェルが諦めずにコツコツと勉強を続けたことはよく知られたエピソードだ。