今までにも、この連載で家父長制とか「家」のようなものに言及したこともあったかと思いますが、ここまでズバリのテーマでくるとは! と驚いたのがこの『葛城事件』でした。
物語は、葛城家の次男、葛城稔(若葉竜也)が、死刑を宣告されるところからスタートします。父の清(三浦友和)、母の伸子(南果歩)、長男の保(新井浩文)、そして次男の稔とマイホームで幸せな家族として暮らしていたはずの葛城家が、どこでそのレールを外れてしまったのかという話になっています。
とにかく父親・清の行動は目に余ることだらけ。長男・保の結婚記念で中華料理屋に行けば、「20年通っているけど味が違う」と怒鳴りつけ、謝る店員に対して「オーナーに葛城だと言え」と告げるし(名前にこだわる姿も何か感じるものが…)、妻・伸子に保の息子(つまり清の孫)の面倒を自宅でみさせて、結婚記念の食事に参加させません。
帰ってみると、引きこもりのため食事に参加していなかった次男の稔が孫を怪我させているものの、みんな次男のせいとは言えず、伸子が苦し紛れに「走り回っていて頭をぶつけた」とウソをつくのです。
私は「抑圧は再生産する」といろいろなところで言っているのですが、この物語はまさに抑圧の再生産、悪循環の話になっていました。稔が甥を殴って怪我をさせるのも抑圧ですが、稔に抑圧をかけているのは父親の清です。清は稔を殴らずに妻・伸子を殴り抑圧し、そして妻・伸子も、長男の嫁に抑圧をかけていて……。
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