「ルールではなくマナー」東急電鉄マナー啓発キャンペーンの伝わらなさ

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「わたしの東急線通学日記 | いい街いい電車プロジェクト」より

「わたしの東急線通学日記 | いい街いい電車プロジェクト」より

 2016年11月に「車内化粧篇」で物議を醸した東急電鉄のマナー向上キャンペーン「わたしの東急線通学日記」が、再び話題になっている。

 シリーズ広告の「わたしの東急線通学日記」は、仁村紗和が演じる、大学進学のために地方から上京してきたばかりの女性が主人公だ。東急線での通学中、目にしたマナー違反に怒ったり、うっかりマナー違反をしてしまう自分に気づいたりし「誰しもマナー違反をしてしまう可能性がある」ということを学んでいくストーリーになっている。これまで、歩きスマホ篇、車内化粧篇、整列乗車篇、荷物篇、音漏れ篇、座席篇の6篇が発表され、主に東急沿線駅構内へのポスター掲示と動画が公開されてきた。

 今回注目されているのは、2017年1月に公開された「座席篇」。座席篇のポスターでは、東急線に乗車している主人公が座る姿の美しい女性に気が付く動画のシーンが切り取られ、「ヒールが似合う人がいた。美しく座る人だった。」というコピーが添えられている。美しく座るその女性の横には、脚を組んで座る男性と大股を開いて座る男性が座っている(コピーテキストを見せるためか、男性の姿は少しぼかされている)。これまでの5篇と違い、今回はマナー違反をする人ではなくマナーの良い人が中心に据えられているのが特徴だ。

 ポスターに対しては、「なぜマナー違反をしている人に直接訴えないのか」「女性ばかりが『美しさ』を求められているように感じる」「マナー違反している人が、このポスターを見て『直そう』と気付くと思えない」といった批判がみられた。なぜ直接マナー違反者に焦点をあてなかったのか、その理由を東急電鉄の広報担当者に聞いた。

「連続するシリーズの広告の中で、座席篇は、マナー違反についてその改善を訴えるだけでなく『良いマナーに触れたときには、気持ち良く感じる』ということを伝える回にしました。結果として良いマナーのお客さまが増え、より多くのお客様に気持ち良く電車をご利用いただけると考えたためです」

 東急電鉄の思いは、なぜ上手く伝わらなかったのだろうか。

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