アメリカの100人にひとりが「ノー!」と言った日 トランプが手放した未来の有権者

文=堂本かおる
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アメリカ人の100人にひとりがマーチ

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 ワシントンD.C.のマーチ参加者は50万人と出ており、大統領就任式参加者の3倍以上に上る。全米3大都市のマーチ参加者は、ニューヨーク40万人、ロスアンゼルス20万人、シカゴ25万人と推定。他方、テキサス州の砂漠にあるとても小さな町で、わずか数十人の女性が荒野を歩く写真も報じられ、見る者の心を打った。専門家によると全米で少なくとも330万人が参加したとあり、つまりアメリカ人の100人にひとりがマーチした計算になる。米国史上最大規模のマーチであり、歴史の1ページを刻んだ日となった。

 D.C.ではマドンナ、R&Bシンガーのアリシア・キーズとジャネル・モナイがゲストとしてスピーチとパフォーマンスを行った。マドンナは「私たちの愛の革命にようこそ!」「今日は私たちの物語の始まりです」と言い、聴衆の女性たちと共に「私たちは(憎しみではなく)愛を選ぶ!」と繰り返した。他にも人権派として知られる女優のスカーレット・ヨハンセン、ラティーノの声を代弁する女優のアメリカ・フェラーラ、著名なフェミニストのグロリア・スタイネム、公民権運動家のアンジェラ・デイヴィス、女性ラッパーのパイオニアMCライト、警察暴力によって息子を亡くした母親たちなど多くのゲストが登場し、参加者をインスパイアした。

 ニューヨークも主宰者の予測10万人をはるかに超える40万人となり、当日、マンハッタンのミッドタウンは大変な人出となった。

 参加者には「プッシー・ハット」と呼ばれるピンクのネコ耳のニット帽を被った女性が多かった。もちろん前述のトランプの下衆な会話に登場した「プッシー(女性器)」に基づく。pussy/pussy catとは本来は猫を意味するが、それが転じてスラングとして女性器を指すようになった言葉だ。マーチ主宰者はこの帽子をマーチのシンボルとした。参加者がこの帽子を被ることにより、マーチの様子を望遠や上空から撮影した写真がピンク一色になる仕掛けだ。参加者には男性も多く、中にはプッシー・ハットを被った男性もいて、なかなかキュートだった。

 多くの人が手製のプラカードを持参した。すっかりおなじみになったスローガン「Love Trumps Hate」(愛は憎しみを打ち負かす)、1995年にヒラリーが唱えた有名なフレーズ「Women’s Rights are Human Rights」(女性の権利は人権だ)と共に、それぞれがトランプにアンチを唱える理由が記されていた。印象に残ったものをいくつか紹介したい。

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「私たちはで連帯する/私たちはで抵抗する」
「この黒猫はワシ掴み仕返すわよ」
「(女性が抑圧されていた)1950年代には戻らない」

 女性の連帯、抵抗、その歴史を訴えるものだ。

「(レインボーカラーで)平等・平等・平等・平等・平等・平等・平等は重要だ」

 トランプ政権にはオバマ時代に合法となった同性婚を覆そうとする気配がある。特にペンス副大統領は強硬なアンチLGBTとして知られる。

「プランド・ピアレントフッド」

 共和党は中絶反対であり、中絶も含め女性医療サービス全般をおこなうプランド・ピアレントフッドというクリニックの閉鎖を目指している。今回のマーチで残念だったのは、反トランプ派ではあるが中絶に同意しない女性たちが参加できなかったことだ。

「私たちの地球は4年待てない」

 トランプと共和党は地球温暖化が進んでいることを否定しており、オバマ政権時のホワイトハウス公式ウエブサイトにあった温暖化のページがすでに削除されている。

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