「ムスリム登録にノー」
トランプは米国内の全イスラム教徒の登録制、イスラム教圏からの移民阻止を訴えている。
「ブラック・ライブズ・マター」
黒人への警察暴力反対運動の名称。トランプが指名した司法長官はレイシストとして知られる人物であり、アンチ警察運動を禁止する動きを見せている。
「すべての人々にパワーを!」
トランプが人種的マイノリティ、性的マイノリティ、移民などあらゆるグループを威嚇していることへのアンチ・メッセージ。
「誰が世界を運営する?(トランプは勘弁)」
トランプが自由の女神のプッシーをワシ掴みにしているイラストもあった。
母親たちは子どもを連れて来ていた。赤ちゃんはベビーカーに乗って行進だ。小学生や中学生の女の子たちはピンクの手書きのプラカードを掲げている。
「ガール・パワー」
「みんなのことを大切にする大統領が必要です」
「愛と平和を作れますか」
共に「中絶禁止への反対」「賃金の男女平等」を訴えていたある母親と中学生の娘のペアは、大統領としてのトランプについて以下のように語った。
母「とても心配です。政治経験がなく、何をするか分かりません。(大統領になる)準備が出来ていません」
娘「クラスの皆もだいたいトランプが嫌いです。ナスティな(いやらしい)ことを言うから」
友人に誘われて来たという若い女性も、「外交、特にアジアとの関係が心配。トランプは(大統領としての)準備ができていません」と語っていた。
トランプの女性への侮蔑的な言動と共に、政治家としての経験が皆無であることを憂う人も多いのである。
未来を見据えたマーチ
女性主導のマーチということもあってか、参加者が膨大な人数であったにもかかわらず、警察の警備は通常のデモより格段に少なく見えた。最終地点にはそれなりの人数の警官が控えていたが、沿道には数えるほどしかおらず、緊張感はなかった。ある地点に女性と男性の警官が立っていたが、いたってリラックスした雰囲気。マーチ参加者の中にワンダーウーマンの扮装をしたドラァグクイーンを見つけると女性の警官が嬉しそうに「写真撮っていい?」と声を掛け、相棒の男性警官が笑顔の二人を撮影したのだった。
就任式当日のD.C.では黒装束のアナーキスト・グループが暴動を起し、警官隊と激しく衝突したが、ウィメンズ・マーチは至って平和的だった。330万人の参加者はトランプ新大統領への怒り、新政権による政策への恐怖に立ち上がったわけだが、マーチによって一朝一夕に事態が変わるわけではないことを十分に理解していたからだろう。マドンナも言ったように、この日が「始まり」の長い4年間が続くのだ。
アメリカは18歳で選挙権を得る。今14歳の子どもたちは次の大統領選で初投票することになる。仮にトランプが再立候補してもマーチに参加した女の子たちは決して票を投じないだろう。母親に事態を教わり、参加者のプラカードを読み、自分自身の考えを育み、以後の4年間、学び、闘っていく子どもたちだ。
トランプ新大統領は未来の有権者を、自らの言動により手放してしまったのである。
(堂本かおる)
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