政治・社会

『高齢者風俗嬢』に見る、たくましい老齢女性の生きざまと、いきすぎた性風俗肯定論

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 同書に登場する女性たちを見ると、「高齢者女性でもこんなに活き活きと働いて、人生を充実させられるを性風俗ってすばらしい!」と思う著者の気持ちもわからないではない。しかし、高齢者風俗嬢を讃える一方で、貧困にあえぐシングルマザーのことを、

「パートで月10万円程度を稼ぎ、ひとり親世帯向けの児童手当を満額で受け取り、公営住宅で暮らし、『貧困だ』『社会が弱者を見捨てている』」と訴える女性より、風俗やAVなどで身体を張って稼いでいる女性のほうが、私にとっては断然好感が持てる」

といってしまうのは、いかがなものだろう。「生活保護に頼らず、風俗で働くなんてかっこいい!」といった内容の記述もあった。

風俗で働くほうが偉い?

 別の項で著者は、2015年の「川崎市中1男児殺害事件」を引き合いに出す。殺された少年の母親はシングルマザーで、いくつもの仕事を掛け持ちして、子どもと一緒に過ごす時間が持てず十分な目配りもできていなかった……という報道を受け、「そうなるぐらいなら性風俗で働いたほうがいい」という主旨のことをかなりのページを割いて暗に主張する。その理由として近年の性風俗がいかにクリーンかを説明していく。

 諸々の手当や生活保護を受けることは何ら悪いことではない。権利である。また、公営住宅に住むことで誰かから批判されることがあってはならない。本来ならもっと手厚い社会保障によって支えられるべき人たちであるにもかかわらず、「風俗で働いているシングルマザーのほうがえらい」とするのは、いきすぎた性風俗肯定主義にしか見えない。著者は、性風俗という仕事が孕むさまざまなリスクにはまったく触れない。

 貧困に陥ったシングルマザーが自主的に性風俗で働き、生活し、子どもを育てる。シングルマザーにかぎらず女性が生きるために性風俗の世界に飛びこむ。そんな女性たちの頑張りやたくましさを謳うために、なぜ「そうしなかった」女性たちを批難しなければならないのか。生活保護を申請にいき、窓口で「性風俗で働けば」といわれたという話をときどき報道で見聞きするが、それと大差ない“差別意識”がここにあるように見える。

 (森友ピコ)

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