「別れた元夫に住宅ローンを支払わせたい」というシングルマザーの願いは叶えられるか?

【この記事のキーワード】

田中:新しく買う場合、今お住まいの家は親御さんの持ち物なので、生前贈与を受け、いったん自分のものにしてから売るということですよね。でも生前贈与の非課税枠は今年贈与を行った場合で、省エネ住宅等=1200万円、一般住宅=700万円しかないんですよ。非課税枠を超えると贈与税がかかります。そこまでして今のマンションを売る必要があるのでしょうか。

姉ケ崎:贈与税に関しては、以前母から税理士さんにお願いして計算してもらったときに、今後も10年以上親に家賃を払い続けるならば、今、贈与を受けて税金を払った方が得だという結論になりました。また私は4人きょうだいなので、親が所有する一軒家やマンションが計3カ所あるのを分けることになっているのですが、「万が一にも将来、相続で揉めることにならないよう、早いタイミングで譲りたい」と母が言っています。

田中:そういう背景があるのですね。ではとりあえず生前贈与の非課税枠である1,200万円(または700万円)分を受け取って、非課税枠を超える部分については“共有名義”にしてもらうのはどうでしょう。そして、親御さんが亡くなったときに相続できるように遺言書を書いてもらうのです。共有名義だと自分のものでもあるから、他のごきょうだいに対して所有の権利をアピールできます。それに、相続するときは不動産価格が下がっているはずだから、相続税が安くすむかもしれません。

姉ケ崎:でもそれだと、売るタイミングを逃しますよね。「親が亡くなった時点でやっと自分のものになる」ということですから。私が今考えているのは、フリーランスなのでとりあえず初回のレクチャーで教えていただいた「フラット35」などのローンでお金を2,000万円ぐらい借りて、新しい物件を買う……という案です。そのうえで今住んでいる部屋を贈与してもらって、売れたらローンの繰り上げ返済をする。周囲の部屋の相場をみると私が住んでいる部屋は、今だと2,400万円ぐらいで売れると思うので、それを返済に充てるつもりです。ただ、私がローンを組めるかどうかの問題もあるんですよね。今は子育て中ということもあり、仕事をかなり抑えていて、年収は200万円、経費などを引いたら150万円程度です。

「家の相続」と「家の購入」を分けて考える。

田中:売却にそこまでこだわるとのは、もしかして現在のお家が好きではないのですか?

姉ケ崎:実はそうなんです。日当たりが悪くて、冬寒いのが嫌なんです。実家から徒歩2分なので、いざというとき子育てをサポートしてもらえるなどのメリットも大きいのですが……。

田中:たまたま親御さんのマンションがあるので、それを元手にどう運用するかを出発点として考えていますよね。ただ、将来はほぼ間違いなく家の価格は下がるという現実があります。姉ケ崎さんが新しい住まいを買うのは価格が下がってから、という考え方もあるのです。「家を相続すること」と「家を買うこと」をいったん切り離して考えた方がよいのでは? お話をうかがっていると、家を買いたい動機が「部屋が寒い」こと以外にあまりない気がするのです。

姉ケ崎:するどい……! だからずっと内見しているのに、購入に至らないんですよね。

田中:もう一度家を買いたいという欲求を見つめ直してみてください。私は親の不動産を相続することも、現代の日本において非常に重要なテーマだと思っています。どのタイミングで譲り受けるのが一番得なのか、相続した物件をどう活用するのか、しっかりと考えてみましょう。どうしても今売って別の住まいを購入したいという場合、お母さまの名義のまま売却し、非課税枠分だけ現金で贈与を受け、売却手取資金で新たな物件を“共同で購入”するという方法もあります。不足分は借入すればよいですし、無理なローンにはならないのではないでしょうか。その場合も、親御さんの共有持ち分は将来の相続時に確実に相続できるよう遺言状が必要だと思います。

*   *   *

 住宅・土地統計調査によれば、60代後半の世帯主の持ち家率は79.8パーセントと、日本は持ち家率が高い国。親がマイホームを持っているケースは、かなり多いのです。売ってお金にするにしても、住み継ぐにしても、どのような手続きを踏めばよいのかが気になりますよね。

 このコンサルティングの後で、姉ケ崎さんのお母様が「2016年中にマンションを姉ケ崎さんに贈与する」方向で税理士と話を進めていたことが発覚しました。結果的に姉ケ崎さんは贈与を受け、今年の2月1日から3月15日の申告期間中に、税務署で「相続時精算課税」という手続きをとる準備を進めているそうです。

 また贈与を受けてお家が自分名義に変わってからも、今住んでいるマンションの住み心地を改善することと、物件を購入することを天秤にかけ、物件探しを続けて行くとのことです。今後ご自身のものになった物件を姉ケ崎さんがどう活用するのか、引き続きレポートしていただきます。

1 2 3 4

「「別れた元夫に住宅ローンを支払わせたい」というシングルマザーの願いは叶えられるか?」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。