全くブレない自己信頼感こそが、渋谷ギャルのカリスマたるゆえん/藤井みほな『GALS!』

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 当時、さまざまなブームを生み出すコギャルたちを有力な消費ターゲットと見なす一方で、「品がない」「だらしない」「学生にふさわしくない」と眉をひそめたり、あるいは“援助交際”とセットで括ったり、コギャルに対する世間の視線や認識は必ずしも“良い”ものではなかった(私の中学にはルーズソックスを“ズルズルソックス”と呼んで嫌悪感を露わにする女性教師がいたなあ。職業柄仕方ないのか)。物語の世界にもそういう“良識”は取り入れられていて、蘭はそんな大人や世間の偏見に反発する。蘭自身はあくどいことや卑怯な真似を許さず、時に熱血発言だってする健全な精神のコギャルである。勧善懲悪のスーパーヒーローみたいな存在だ。作中には大人でも子どもでもなかなかクセの強い人物(闇を抱えた問題のある人物)が多数登場するのだが、卑怯なやつは許せないし、何だかんだ困っている人を放っておけない蘭があれこれ問題を解決する“正義の味方”的要素もあった。読んでいてスカッとする、女子高生版『半沢直樹』というか(でも復讐ものではない)。

 そんな蘭と行動をともにする親友が2人いる。

 蘭とは中学の頃からの親友の山咲美由(やまざき・みゆ)。彼女も私立鳳南高校1年生だが、裕福そうな蘭の家庭とは違い、育児放棄のシングルマザー家庭に育ち現在進行形で孤独を抱えている。中学時代は極悪不良で、チーマーのリーダーを務めていた美由、おそらくキレると蘭よりもっと喧嘩が強い。ただ、相手を殺しかねないため、蘭は美由を止めるストッパー的な役割でいなければならないと自覚し、いつもそばにいる。美由を支えるもう一人の存在は、蘭の実兄で新人警察官の大和だ。渋谷の交番に勤務し、たびたび補導される美由を親身になって救った大和は、美由に惚れられ今は相思相愛の恋人関係にある。美由が高校を卒業したら結婚する予定だ。

 もう1人は、初登場時は清楚なお嬢様系の優等生だった星野綾(ほしの・あや)、私立鳳南高校1年生。綾の両親は厳格で過干渉。そんな両親への反発で(肉体関係を伴わない)援助交際をしていたのだが、蘭にこっぴどく叱られ、そのことがきっかけで蘭、美由と打ち解けて仲間になった。自分に自信がなく、無意識に他人の評価を気にして動いてしまう性格だが、蘭や友人たちとの関係、恋愛を通して少しずつ成長していくキャラクター。

 『GALS!』は、この3人の友情を軸に、コギャル(女子高生)の恋愛、家族、高校生活、進路などを描いた青春ストーリーで、“コギャル”というカルチャーを活かした青春漫画といったところだ。3年半におよぶ長期連載で、登場人物も毎年進級し、やがて卒業する。

主人公がイケメンとくっつかない超展開

 女子の関心はいつでも恋とオシャレ、とばかりに、作中の女子高生たちは惚れた腫れたで忙しい。3人が在籍する鳳南高校は共学だが蘭たちはいつもコギャル同士で大騒ぎして盛り上がっているのが常で、男子生徒との絡みは少ない。その代わり、高校の枠を超えて“渋谷”つながりの他校男子生徒とはいつもつるんでいる。つまり、イケてるギャルは、イケてるメンズとセットで遊ぶのである。蘭たちが行動を共にするのは、「スーパー高校生グランプリ」で1位の乙幡麗(おとはた・れい)と2位の麻生裕也(あそう・ゆうや)。二人とも明匠第一高校の男子生徒で、いうまでもなく2人ともイケメン、渋谷を歩けばファンの女子に囲まれる人気者だ。実際、当時「スーパー高校生」の人気は凄まじかった。麗は見た目さわやか系で性格はクールでマイペース、裕也は見た目チャラそうだが相当なヘタレ。ちなみに2人とも学力は高い。明匠第一は男子校なのだが、麻布高校あたりがモデルなのだろうか。

 さて、その麗も裕也も、好きになった相手は蘭だった(ただし麗に関しては、伏線は多々あっても明確に示されるのは26話)。ここまではわりとよくある話である。読者の感触だと、最終的には麗とくっつくんじゃないかと想像する。が、鈍感すぎる蘭は、どちらの好意にも全く気づかず、第12話で突如登場したタツキチこと黒井達樹(くろい・たつき)と「お前面白いじゃん」という理由で、会った当日に付き合いはじめる。タツキチは蘭とノリが合うし面白い奴だが、麗、裕也ほどビジュアルが良いわけではなく(色黒のギャル男で町田在住)、いわゆる少女漫画の王道イケメンとは言い難いキャラで、こういう展開!? と衝撃的だった。しかも、かませ犬かと思いきや、その後ずーっとタツキチは「蘭の彼氏」として出続けるのである。

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